改訂新版 世界大百科事典 「綴方教室」の意味・わかりやすい解説
綴方教室 (つづりかたきょうしつ)
豊田正子の綴方作品集。豊田は1922年東京の下町,本所に生まれ,葛飾区立本田立石尋常小学校4年生のとき,子どもの目に写った下町の庶民生活を綴方に書いた。それらが雑誌《赤い鳥》綴方作品欄に多数入選し,鈴木三重吉の高い評価を得,大木顕一郎・清水幸治共著《綴方教室》(1937)として出版された。同書は,大木の指導によって豊田の才能が作品化されたもので,綴方表現指導を現実社会の認識・思考の教育的方法として位置づける生活綴方運動の作品群とは異質である。むしろ彼女の,貧苦にくじけず,けなげに生きる姿や卓抜な表現力が世間の注目を集め,また舞台にかけられたり,映画化されるなどして,綴方の題材の広がりや子どもの事物を見る固有の目の発見に影響を及ぼした。
執筆者:碓井 岑夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報