赤い鳥(読み)アカイトリ

デジタル大辞泉 「赤い鳥」の意味・読み・例文・類語

あかいとり【赤い鳥】

児童文芸雑誌。大正7年(1918)創刊。昭和11年(1936)廃刊鈴木三重吉主宰芥川竜之介の「蜘蛛の糸」をはじめ、有島武郎北原白秋らの創作童話童謡掲載

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精選版 日本国語大辞典 「赤い鳥」の意味・読み・例文・類語

あかいとり【赤い鳥】

  1. 児童文芸雑誌。大正七年(一九一八)創刊、昭和四年(一九二九休刊、同六年復刊、同一一年終刊。全一九六冊。鈴木三重吉主宰。童話を文芸として高め、創作童謡や児童の作文、自由詩自由画などに大きな影響を与えた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「赤い鳥」の意味・わかりやすい解説

赤い鳥
あかいとり

子供のための童話雑誌。1918年(大正7)7月に創刊され、一時休刊したが、1936年(昭和11)8月まで196冊を刊行した。主宰者は夏目漱石(なつめそうせき)門下の小説家、鈴木三重吉(すずきみえきち)で、小説家としての行き詰まりを児童文化運動に打開すべく『赤い鳥』を創刊、彼の後半生はこの童話雑誌の編集に捧(ささ)げられた。『赤い鳥』は大正期の児童文化運動におけるもっとも重要な雑誌であり、五つの大きな役割を果たした。第一は、明治期の前近代的な児童読物を克服して近代的、芸術的な童話を生み出したことで、芥川龍之介(あくたがわりゅうのすけ)の『蜘蛛(くも)の糸』、有島武郎(ありしまたけお)の『一房の葡萄(ぶどう)』、小川未明(おがわみめい)の『月夜と眼鏡』などの童話がそれである。第二は、北原白秋、西条八十(さいじょうやそ)らの詩人に加え山田耕筰(やまだこうさく)、成田為三(なりたためぞう)らの作曲家の協力も得て新しい童謡の花を咲かせたこと。第三は、清水良雄、鈴木淳(すずきじゅん)(1892―1958)、深沢省三(1899―1992)など健康な美しさにあふれた童画を開拓したこと。第四は、久保田万太郎秋田雨雀(あきたうじゃく)らを書き手としてモダンな童話劇を試みたこと。そして第五は、読者である子供たち自身のつくりだす文化としての綴方(つづりかた)、児童自由詩、児童画を開発したことである。創刊50周年にあたる1968年(昭和43)と1979年の二度にわたり、日本近代文学館より全冊が復刻されている。

上笙一郎

『日本児童文学学会編『赤い鳥研究』(1965・小峰書店)』『坪田譲治他編『赤い鳥代表作集』全3巻(1979・小峰書店)』『『赤い鳥復刻版 解説・執筆者索引』(1979・日本近代文学館)』『『赤い鳥傑作集』(新潮文庫)』

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改訂新版 世界大百科事典 「赤い鳥」の意味・わかりやすい解説

赤い鳥 (あかいとり)

鈴木三重吉によって主宰された児童文芸雑誌。1918年7月創刊から29年3月までと,31年1月から36年10月の〈三重吉追悼号〉までの前後期を通じて合計196冊発行。三重吉は自分の娘に読んで聞かせる子どもの読みものが〈実に乱暴で下等なのに驚きあきれ〉,〈純情的な興味から〉童話を書き出したという。俗悪,下劣な読みものや雑誌の現状に対して,〈世間の小さな人たちのために,芸術として真価ある純麗な童話と童謡を創作する,最初の運動〉をめざし,島崎藤村,徳田秋声,野上弥生子,芥川竜之介,泉鏡花,小川未明,有島武郎ら当時,文壇で活躍していた人たちを執筆に動員した。それぞれの作品は日本内外の童話や伝記物の翻訳,翻案(再話)による唯美的なものが主流で,〈児童読みものの文学的水準を高める〉という三重吉の意図は一貫していた。また,同誌は作家に子どものための作品を書く場を提供したばかりでなく,子どもにも自由な表現を促す場を提供した。そして,子どもの応募作品に対して,毎号,三重吉が綴方を,北原白秋が児童自由詩を,山本鼎(かなえ)が自由画を選び,批評し,指導することにより児童文化の領域を広めるとともに全国の子どもの表現に影響を与えた。身のまわりの現実の生活をリアルに描き出す子どもの作品に目を開かされた三重吉は,綴方をたんなる文章表現の練習としてでなく,〈人そのものを作りとゝのへる,人間教育′の一分課〉ととらえた。明治以来,芸術的価値の世界と教育の世界が隔絶されていたのを文章によって結合させ,〈人間教育としての綴方〉を確立させていった。また,ここから坪田譲治新美(にいみ)南吉などの児童文学者を生むとともに,全国に多くの綴方教師を生んだ。昭和期に入ると,その文芸主義的,自由主義的傾向が克服されながら,生活綴方の運動を生み出す母胎となった。
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百科事典マイペディア 「赤い鳥」の意味・わかりやすい解説

赤い鳥【あかいとり】

1918年鈴木三重吉が創刊・主宰した児童文芸雑誌。1929年―1930年の休刊を除き1936年まで続刊。芸術性豊かな創作童話・童謡の確立を目ざして,執筆者に森鴎外島崎藤村芥川龍之介らを得,小川未明北原白秋秋田雨雀らの活躍もあって大正以後の児童文学発展に貢献。坪田譲治新美南吉(にいみなんきち)ら新人作家を世に出した。また三重吉,白秋,山本鼎(かなえ)が綴方(つづりかた),自由詩,自由画を指導し,児童自身による創作活動への道をひらいた。これは昭和期に入ると,生活綴方運動を生み出す基盤となった。
→関連項目西条八十童謡

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「赤い鳥」の意味・わかりやすい解説

赤い鳥
あかいとり

児童文芸雑誌。 1918年7月~36年 10月発行。通巻 196冊。主宰は鈴木三重吉。芸術性豊かな童話,童謡の創造を目指して発刊され,森鴎外,島崎藤村,芥川龍之介らの支持を受けた。「現代第一流の芸術家」および「若き子供のための創作家」を執筆者とし,芥川の『蜘蛛 (くも) の糸』『杜子春』,有島武郎の『一房の葡萄』,宇野浩二の『蕗の下の神様』などの創作,北原白秋,西条八十の童謡などの発表の場となった。また坪田譲治,新美南吉,与田準一らの童話,童謡作家を育て,日本の児童文学の発展に多くの貢献をした。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「赤い鳥」の解説

赤い鳥
あかいとり

鈴木三重吉(みえきち)が1918年(大正7)7月,児童読み物の文学的水準を高めることを目的に創刊した児童文芸雑誌。36年(昭和11)8月の終刊まで,小川未明・島崎藤村・芥川竜之介・有島武郎・北原白秋・山田耕筰(こうさく)ら当時一流の芸術家が近代童話や童謡を執筆。この雑誌を通じて坪田譲治・新美(にいみ)南吉・与田準一ら多くの児童文学者を育て,また児童の投稿作品の綴方指導など児童教育にも大きな影響を与えた。

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旺文社日本史事典 三訂版 「赤い鳥」の解説

赤い鳥
あかいとり

大正・昭和期,鈴木三重吉主宰の児童文学雑誌
1918年創刊。一時休刊したが '36年まで続いた。北原白秋・島崎藤村・小川未明らの寄稿を得て,芸術的香気豊かな児童文学を樹立し,児童教育にも大きな影響を与えた。

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世界大百科事典(旧版)内の赤い鳥の言及

【児童雑誌】より

…田山花袋,小川未明,久保田万太郎らに誌面を開放し,優れた作品を掲載したが,一方,営利主義的傾向がしだいに強まり,編集への制約がはたらくようになったことも見逃せない。 大正期には《赤い鳥》を中心とする,格調の高い芸術志向の童話・童謡誌と,主として講談社から刊行された大衆的児童雑誌という二つの流れがあった。明治以来の国家教育の圧力から脱し,子どもの個性と創造性を尊重し解放しようとする新しい教育の動きを背景に,鈴木三重吉の理想が実を結んでできたのが《赤い鳥》である。…

【童謡】より

…これらは,従来のわらべうたと区別するため創作童謡,芸術童謡などともいわれ,またわらべうたの方を伝承童謡とよんでいた。 1918年に鈴木三重吉らによって創刊された児童雑誌《赤い鳥》を基盤に展開された〈赤い鳥〉の運動は,泉鏡花,小山内薫,芥川竜之介,北原白秋,島崎藤村ら当時を代表する文学者の参加を得て児童文学の運動として始まった。北原白秋がおもに詩を担当し,わらべうたのスタイルを踏襲した韻を踏んだリズミカルな詩をのせた。…

【新美南吉】より

…半田中学在学中から《少年俱楽部》《愛誦》などの諸雑誌に投稿したり,級友たちと作品朗読会を開くほか,同人誌《オリオン》を出すなど,早熟な文学少年であった。1931年の中学卒業前後に書いた《ごん狐》《正坊とクロ》などの童話が鈴木三重吉に認められて《赤い鳥》に掲載され,その縁で巽聖歌,与田準一などの同人誌《チチノキ》に参加,多くの童謡を発表した。34年,東京外語在学中に喀血,卒業後帰郷して38年から安城高等女学校の教諭となり,“久助君もの”と呼ばれる少年心理を掘りさげた作品,後期メルヘンの《花のき村と盗人たち》《牛をつないだ椿の木》などを執筆。…

※「赤い鳥」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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