改訂新版 世界大百科事典 「綿座」の意味・わかりやすい解説
綿座 (わたざ)
綿を販売する座。南北朝期の1343年(興国4・康永2),京都では祇園社に属する綿本座が三条町と七条町にあり,四府駕輿丁座付属の錦小路町の綿商人を吸収し,本座に加えている。したがってこのころまでに祇園社の綿本座の販売独占権が確立していたと考えられる。また同年,振売を行っていた新興の散在商人が綿新座を称して,本座と激しい争論をおこし,新座も承認されるが,このときの新座商人は64人に上っている。綿本座・新座商人はともに祇園社の神人であり,毎年6月の祇園会には神供米を献上,営業税を納めて独占権を確保していた。新座商人は人別200文の公事銭を負担しており,これは営業権を認められたかわりに本所祇園社に出したもので,祇園社は南北朝期に積極的に新興商人を吸収していったことが知られる。また,新座神人から社役を徴収し,反対に祇園社社家から免許札を受けて神人に渡したのは,綿問屋である万里小路に住む播磨阿闍梨昌禅であった。この問屋は問屋のひじょうに早い例として知られているが,本座商人が問屋化したものではない。石清水八幡宮にも,1441年(嘉吉1)ころ新綿・古綿座があり,境内末社修造に際して人夫役を負担している。なお原料の綿は,室町期には美濃,坂東,越中などからもたらされている(《庭訓往来》)。
執筆者:田端 泰子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報