緩衝装置(読み)カンショウソウチ

デジタル大辞泉 「緩衝装置」の意味・読み・例文・類語

かんしょう‐そうち〔クワンシヨウサウチ〕【緩衝装置】

ばね・ゴム油圧などを利用して、機械的な衝撃を緩和する装置。自動車バンパーもこの一種緩衝器

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精選版 日本国語大辞典 「緩衝装置」の意味・読み・例文・類語

かんしょう‐そうちクヮンショウサウチ【緩衝装置】

  1. 〘 名詞 〙 機械的衝撃を緩和する装置。ゴム、ばね、空気、油などの弾性効果を利用して、衝撃の運動エネルギー弾性エネルギーに変換し、粘性固体内部摩擦などによってエネルギー消散を行なうもの。車両航空機火砲など各種の機械装置機構の一部として用いられる。緩衝器。ダンパー

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「緩衝装置」の意味・わかりやすい解説

緩衝装置
かんしょうそうち

運動体と他の物体または固定壁との間で運動エネルギーを吸収し、物体に加わる振動や衝撃を和らげるばね、防振ゴム、油圧装置などをいう。往復運動をするものがあると、そこから振動が伝わってくる、回転部分に不つり合いがあると振動がおこる、あるいは共振状態になると振動が激しくなるというように、振動の原因はいくつかある。したがって、振動を防ぐのにはその原因を取り除けばよい。たとえば自動車のエンジンの振動を少なくするのには、シリンダーの数を増やし、ピストンの運動する方向を調整して振動の原因を極力小さくする。回転体の場合には、つり合い試験機などで不つり合い量を測定し、それを削り取ったり、また回転中心の反対側に余分のおもりをつけるなどしてなるべく不つり合いの量を小さくする。共振を避けるのには、振動数をなんらかの方法で変えるとか、あるいは共振した場合にその振幅があまり大きくならないように振動を減衰させるくふうをする。しかし、自動車のように、速度が広い範囲に変動し、道路の凹凸により車体に加わる振動はその原因を取り除くことができないので、車体の振動を少なくするために各種の緩衝装置が用いられる。

(1)リーフスプリング板ばね) 振動や衝撃を吸収するのにもっとも普通に用いられているのはスプリング(ばね)である。ばねはコイルばね、板状のものなどがある。板状のものを何枚か重ねたものをリーフスプリングといい、自動車、貨車、客車などに車軸と車体との間に取り付けられて、道路やレールからの激しい振動が車体に伝わるのを防いでいる。

(2)コイルばね 鋼鉄の針金をコイル状に巻いたもので、針金の径は大小さまざまである。コイルばねの径もいろいろあり、目的によって使い分ける。エンジンやモーターなどを取り付けるときに、取付け台との間にコイルばねを入れて、エンジンなどの振動が伝わるのを防いだり、またエンジン自身が激しく振動するのを防いだりする。

(3)トーションばね(ねじりばね) 棒の一端を固定し、他端をねじると、そのねじり角があまり大きくないときには、ねじる力を取り除くと棒のねじり変形はもとに戻る。ねじられたときにねじり力によるひずみエネルギーを蓄えるので、外力による衝撃などを和らげるのに使用できる。これをトーションばねといい、自動車の車軸と車体との間で緩衝用に使用されている。

(4)防振ゴム ゴムは外力を加えると変形するが、金属などと違って変形がかなり大きくても、外力を取り除いたときにもとに戻る性質をもっている。すなわち変形量が大きくても弾性的性質を失わない。またゴムはその内部に粘性的性質をもち、外力のエネルギーをよく吸収する。したがって振動の防止、衝撃を和らげる部材として都合がいい。防振ゴムは普通、金属の板にゴムを接着したものが用いられ、その形はいろいろある。2枚の金属の板の間にゴムを挟んだもの、あるいは大小二つの円筒の間にゴムを挟んだものなどである。引張り力、圧縮力、剪断(せんだん)力、あるいはそれらの力が組み合わせられて加わった場合でも衝撃や振動をよく吸収するので、自動車のエンジンを車体に取り付けるのに防振ゴムを介して行っている。モーター、工作機械などから発生する振動、あるいは衝撃を床に伝えないために防振ゴムの上に設置したり、また他からの振動が加わらないように測定器を防振ゴムで支えるなど、各方面で使用されている。

(5)空気ばね ゴムまり、タイヤのようにゴム製の容器の中に空気を密閉したものは、振動や衝撃のエネルギーを吸収するので緩衝用として使用できる。自動車や自転車の車輪に使用しているタイヤも空気ばねの一種である。バスあるいは地下鉄の車両で車体を支えるために空気ばねが使用されている。道路あるいはレールなどの凹凸による振動や衝撃を和らげ、乗り心地をよくする効果がある。

(6)ダッシュポット シリンダーとピストンからなり、シリンダーの中に油が入っている。ピストンの一部に小さな穴があいていて、シリンダー内の油はこの穴を通してピストンの前後に流れ出ることができる。ピストンに衝撃力が加わった場合、油は小さな穴を通って流れるが、穴が小さいので油の流れはゆっくりしている。したがって、ピストンは急激には動かないでゆっくりと動く。すなわちピストンに加わった衝撃を緩和することができる。これをダッシュポットといい、緩衝装置として広く用いられている。たとえば飛行機が着陸するときに脚の車輪が滑走路に接するとき機体に衝撃力が加わらないように、脚の部分にダッシュポットがついていて、衝撃を吸収する。また自動車の車軸と車体との間にもダッシュポットをつけ、道路の凹凸による衝撃が車体に伝わらないようになっている。

(7)フォームラバー 発泡プラスチックのように、小さな穴をたくさん含んでいるプラスチックをフォームラバーといい、緩衝用に使用する。荷物を輸送するときなど、製品をフォームラバーで包み、木あるいは原紙の容器に入れれば輸送途中に加わる衝撃や振動を和らげ、製品の破損を防止することができる。

[中山秀太郎]


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世界大百科事典(旧版)内の緩衝装置の言及

【着陸装置】より

…車輪のブレーキは大型機や高速機は多板式,小型機は単板式の油圧ディスクブレーキがふつうで,ブレーキを強くかけたときにタイヤのロックを自動的に防ぐアンチスキッド装置をもつものが多い。支柱には着陸や走行中のショックを和らげるため緩衝装置が組み込まれ,これは圧縮空気と油を入れたシリンダーの中をピストンが動く空気油圧式が多い。油だけを入れた液体ばね式もあり,軽飛行機では板ばねの支柱やゴムの緩衝装置も使われる。…

※「緩衝装置」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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