罪無くして配所の月を見る(読み)ツミナクシテハイショノツキヲミル

デジタル大辞泉 の解説

つみくして配所はいしょつき

流罪の身としてではなく、罪のない身で、配所のような閑寂な土地の月を眺めれば、情趣も深いであろうということ。俗世を離れて風流な趣を楽しむことをいう。

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精選版 日本国語大辞典 の解説

つみ【罪】 無(な)くして配所(はいしょ)の月(つき)を見(み)

  1. ( 「古事談‐一」などによると、源中納言顕基(あきもと)がいったといわれることば ) 罪を得て遠くわびしい土地に流されるのではなくて、罪のない身でそうした閑寂な片田舎へ行き、そこの月をながめる。すなわち、俗世をはなれて風雅な思いをするということ。わびしさの中にも風流な趣(おもむき)のあること。物のあわれに対する一つ理想を表明したことばであるが、無実の罪により流罪地に流され、そこで悲嘆にくれるとの意に誤って用いられている場合もある。
    1. [初出の実例]「もとよりつみなくして配所の月をみむといふ事は、心あるきはの人の願ふ事なれば、おとどあへて事共し給はず」(出典:平家物語(13C前)三)

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故事成語を知る辞典 の解説

罪無くして配所の月を見る

俗世を離れて、わびしさの中にも風雅な趣がある生活をすることのたとえ。

[使用例] 裏町横町の露路を入れば、罪のうして配所のごとき棟割長屋尾崎紅葉*三人妻|1892]

[由来] 一一世紀、平安時代中期の貴族みなもとのあきもとのことばから。「古事談―一」には、顕基が「あはれ罪無くして配所の月を見ばや(ああ、罪もないのに、罪人が流されるような遠い土地へ行って月を眺めたいものだ)」と言った、とあります。このことは、「徒然草―五」でも取り上げられて、一種美学として高く評価されています。

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