老いては子に従え(読み)オイテハコニシタガエ

デジタル大辞泉 「老いては子に従え」の意味・読み・例文・類語

いてはしたが

《「大智度論九九から》年をとってからは、何事も子に任せて従ったほうがよいということ。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

ことわざを知る辞典 「老いては子に従え」の解説

老いては子に従え

年老いた後は、何事も子どもにまかせ、その方針に従うがよい。

[使用例] 商人「そんなに面白かったんですか、よかったねおッかさん。おぶって行ってあげましょうか。」母親「有難いけれど、若い者みっともないわたしはボツボツ歩くからいいよ。」商人「構やしませんよ夜ですもの。夜でなくたって子が親をおぶって行くのに、笑う人があるもんですか。おッかさん老いては子に従えですよ。倅のいう事を聞かないと叱られますとさ。」[長谷川伸*瞼の母|1930]

[使用例] まあ、娘にいたわられる年齢になったということでしょうか。でも、だからと言って、「老いては子に従え」という言葉に従う気はありません。私の人生もすでに大詰め、幕切れに差し掛かっているのだから、自由に、好きなようにさせてよね、と言わせて欲しい[中村メイコ*夫の終い方、妻の終い方|2012]

[解説] 元来は、中国の「礼記」や仏典に由来する三従の教えで、「若い時は親に従い、盛りにしては夫に従い、老いては子に従う」といい、日本でも古くから女子教育の規範とされてきました。
 江戸初期には、最後の部分が独立して使われるようになり、女性だけでなく、むしろ男性に対して多く使われるようになります。その背景には、古くから行われていた隠居制度の影響があるでしょう。江戸後期には、江戸のいろはかるたにも収録され、絵札には男の老人が描かれます。また、当時のせきもんしんがくでは、このことわざを引いて、「功なりとげて身退しりぞくは天の道」と説く本もありました。
 今日でもよく知られた表現ですが、規範とする意識はほとんど薄れ、子どもが年老いた親に冗談めかして口にし、説得することが多くなっているといえるでしょう。

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