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老人遺棄 ろうじんいき

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

老人遺棄
ろうじんいき

社会的活動が困難になった老人を,人里離れた地に捨てる習俗。遊牧民族にその例が最も多くみられるが,定着民族にも棄老の習俗をもつものは少くなく,その分布は世界的に広い。棄老の原因としては,食糧事情など経済的条件,モンゴル人などにみられる民族移動に際しての同伴の困難,アフリカのプンカー族などにみられる老齢による首長の権威失墜などがあげられるほか,病気感染を憑依霊によるものとみる病者への恐怖など,さまざまなものがある。

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出典|ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

老人遺棄
ろうじんいき

棄老ともいわれ、生存価値の小さくなった老人を人里離れた地に置き去りにして死に追いやる習俗。極北の狩猟民、南米ボリビアのシリオノ人、北欧のサーミ人、アフリカ南西部のコイ人、オーストラリア先住民など世界中に広くあったとされるが、伝説的要素も強く、すべてが歴史的事実であるとはいえない。
 自立的生産能力を失った老人を扶養するのは人類にのみみられる現象で、ときにはそれが社会の負担となる。とりわけ、キャンプからキャンプへ移動を繰り返しながら食糧を求めていく採集狩猟民にとっては、食糧事情や移動の条件が悪いときには、老衰した老人を抱えることは全体社会の生存にとって脅威となりかねない。そうした状況の下で、老人はしばしばキャンプ跡に置き去りにされたり、自らだれにも告げずに集団を離れたり、あるいは集団によって自殺幇助(ほうじょ)の手段がとられたりした。
 しかし、そうした社会でも、すべての老人が遺棄されるのではなく、肉体的には衰弱しても社会の安定と福祉に貢献しうる者は高く評価された。たとえば、病気治療のための呪術(じゅじゅつ)に詳しい老人、皮なめしの技術に秀でた老女などは社会の有用な一員として機能した。
 日本にもこれに似た習俗は、信州の姥捨山伝説(うばすてやまでんせつ)など、広く全国的に伝えられている。伝説の内容は二つに大別され、一つは、遺棄された老人の知恵で数々の難問を解くことができた話、もう一つは、棄(す)てに行くルートを老人が覚えていて立ち戻ったり、あるいは棄てようとする人に帰り道を教えてやる話である。いずれにも共通していえることは、老人のもつ長い経験からくる深い知識はかならず社会の役にたつという教えであり、民話、伝説の形で老人の存在価値を諭しているといえる。[片多 順]

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