フランスの彫刻家ロダンの代表作の一つ。1880年に装飾美術陳列館のための正面大扉の制作をフランス政府から依頼されたロダンは、ダンテの『神曲・地獄編』に想を求めて『地獄の門』を制作することとし、その中央上部欄間に設置する要(かなめ)の像としてこの作品を構想した。したがって『考える人』は、地を見下ろし瞑想(めいそう)しているダンテを象徴した像であり、もともとは「詩人」と題するつもりでいた。しかし、たまたま鋳造家がかってによんでいた名称が、今日では通称となっている。1888年に、『地獄の門』とは独立した作品として大きくつくられ、1904年のサロンに出品されてから有名になった。のちに大小4種類の『考える人』がつくられた。東京の国立西洋美術館に収蔵されているのは、なかでももっとも大きな作品(高さ186センチメートル)の一つであり、そのほか京都国立博物館をはじめ、世界各地に大きさの異なる作品がいくつか散在している。
[三田村畯右]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報