家庭医学館 の解説
じせいたいじょうほうしんみみへるぺすらむぜーはんとしょうこうぐんはんとしょうこうぐん【耳性帯状疱疹(耳ヘルペス)/ラムゼー・ハント症候群(ハント症候群) Herpes Zoster Oticus / Ramsay-Hunt Syndrome】
水痘帯状疱疹(すいとうたいじょうほうしん)ウイルス(ヘルペスウイルス属の1つ)に乳幼児期に初感染すると水ぼうそう(水痘(「水痘(水ぼうそう)」))になります。
このウイルスは、水ぼうそうが治った後もからだのいろいろな神経節の中に潜んでいます(潜伏感染(せんぷくかんせん))。そして、まだ原因ははっきりとわかっていませんが、疲労、精神的ストレス、日光照射、発熱などの刺激や、糖尿病の悪化、免疫抑制薬(めんえきよくせいやく)の服用などをきっかけに再活性化し、今度は帯状疱疹(たいじょうほうしん)(「帯状疱疹」)という病気をひきおこします。
耳を中心におこったこの帯状疱疹を耳性帯状疱疹(じせいたいじょうほうしん)(耳(みみ)ヘルペス)といいます。
[症状]
発熱、寒けなどとともに耳介(じかい)、外耳道(がいじどう)に小水疱(しょうすいほう)(小さな水ぶくれ)ができ、激しい耳の痛みもともないます。軟口蓋(なんこうがい)(図「口腔のしくみと上下顎骨」、図「口腔」)など、口の中にも発生することがあります。
また、顔面神経まひをともなうことが多く、顔面神経まひのほかに、感音難聴(かんおんなんちょう)、耳鳴り、めまいなどの内耳障害(ないじしょうがい)をともなうものをラムゼー・ハント症候群(ハント症候群)といいます。
これは、顔面神経の膝神経節(しつしんけいせつ)という場所に潜んでいた水痘帯状疱疹ウイルスの再活性化によっておこるものです。
[検査と診断]
分子生物学的手法で、水疱中か唾液(だえき)中の水痘帯状疱疹ウイルスのDNAを検出するのがもっとも確実な診断法です。また、中の抗水痘帯状疱疹ウイルスIgM抗体価(こうたいか)の上昇を確認するのも診断の助けになります。
顔面神経まひがあれば筋電図(きんでんず)検査、神経興奮性検査を行なって、まひの程度、顔面神経の障害部位を診断します。
難聴、めまいがあれば、通常の耳科的検査も実施します。
[治療]
ウイルスが原因であることがはっきりすれば、抗ウイルス薬(アシクロビル)を注射します。
これに加え、炎症を鎮める副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモンの注射か内服、ビタミンB12剤、代謝(たいしゃ)を賦活(ふかつ)する(活性化する)ATP剤、鎮痛薬(ちんつうやく)の内服、病変部への軟膏(なんこう)の塗布(とふ)などを行ないます。
顔面神経まひには、顔面マッサージが行なわれます。
これらの治療を行なっても、顔面神経まひが治らず、患者さんが希望した場合は、顔面神経減荷術(がんめんしんけいげんかじゅつ)という手術が行なわれ、まひが回復することもあります。
後遺症として神経痛がおこることは、胸部におこる帯状疱疹に比べて少ないといえます。