水痘(読み)スイトウ(その他表記)varicella

翻訳|varicella

精選版 日本国語大辞典 「水痘」の意味・読み・例文・類語

すい‐とう【水痘】

  1. 〘 名詞 〙 水痘ウイルスによって起こる感染症。二~六歳の子どもに多く、罹患すると終生免疫を得る。三八度以上の熱が出て、全身に小さな水疱が多数でき、かゆみが強い。二週間ぐらいで乾燥し、かさぶたがとれて治る。みずぼうそう。みずいも。〔病名彙解(1686)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「水痘」の意味・わかりやすい解説

水痘
すいとう
varicella
chickenpox

発熱と全身性の水疱(すいほう)性発疹(ほっしん)を主徴とする伝染力の強いウイルス性の伝染病で、病原体は帯(たい)状疱疹と同一のウイルスvaricella-zoster virus(水痘‐帯状疱疹ウイルス、略称V‐Zウイルス)とされている。小児にしばしばみられ、俗に水疱瘡(みずぼうそう)とよばれたが、これは痘瘡(とうそう)(天然痘)との類似点が多かったことによる。成人期に罹患(りかん)すると水痘肺炎を合併して重症となることが多い。また、同一家族内で小児に水痘、成人に帯状疱疹がみられることもある。伝染は直接または物品を介して接触感染もするが、飛沫(ひまつ)感染することが多い。あらゆる年齢にみられるが、一度かかれば終生免疫が得られるので、とくに2~10歳の幼児に多くみられる。

 潜伏期は普通2週間前後で、前駆症状はほとんどなく、軽い発熱と同時、あるいはすこし遅れて発疹が現れる。顔・胸・腹などに始まり全身に及ぶが、その性状は小さい紅斑(こうはん)が多発し、それが速やかに盛り上がって丘疹となり、半日ほどでアズキ大の円形または卵円形の水疱状となる。内容は水様で、ときに膿(のう)様になることもあるが、出血や皮下出血を伴う病型は重症で、近年各種疾患の治療に副腎(ふくじん)皮質ホルモン剤が使用されるようになって増えてきた。水疱壁は破れやすく二次感染をおこして化膿しやすいが、2~3日で乾燥して黒褐色痂皮(かひ)(かさぶた)となり、10日前後で脱落して治癒する。かきむしったり化膿させなければ、発疹は瘢痕(はんこん)を残さない。水痘の急性期には相次いで発疹が形成され、同一部位にも紅斑・水疱・痂皮など時期を異にする大小の発疹が混在しているのが特徴である。なお、水疱疹が出そろうころ(発病後約1週間)までは伝染力があるので、通園・通学は禁止する。合併症としては、水疱をかきむしって細菌感染(化膿)をおこすほか、水痘脳炎や水痘肺炎、水痘腎炎などもみられる。

 治療は、合併症がなければ安静を守り対症療法を行う。手をよく洗い、爪(つめ)を切って皮膚をかかないよう注意するほか、かゆみ止めの軟膏(なんこう)を塗ったり、化膿止めに抗生物質の予防内服も行われる。全身的対症療法としては、解熱剤、鎮痛剤、鎮静剤のほか、抗ヒスタミン剤や精神安定剤などが適宜使われる。また重症水痘に対しては、抗ウイルス剤のビダラビンなどが有効とされているが、帯状疱疹回復期血清からつくられるγ‐グロブリンの大量療法も行われ、これはまた、水痘感染機会後72時間以内に筋肉注射をすると発病が阻止されるか、発病しても軽症として経過する。予防には水痘生(なま)ワクチンがあり、免疫獲得率は100%に近く感染防御率もきわめて高いが、今後の実用化が期待されている段階である。なお、副腎皮質ホルモン剤を使用している患者は、とくに水痘感染には十分注意する必要がある。

[柳下徳雄]

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家庭医学館 「水痘」の解説

すいとうみずぼうそう【水痘(水ぼうそう) Chickenpox】

[どんな病気か]
 水痘帯状疱疹(すいとうたいじょうほうしん)ウイルスの感染によって、全身に水疱性(すいほうせい)の発疹(ほっしん)が出る病気です。
●かかりやすい年齢
 母親から免疫体(めんえきたい)を受け継いでいるので、赤ちゃんのうちはかかることはなく、2~6歳からかかりやすくなるのですが、子どものときに感染をまぬがれて、青年期になってかかる人もいます。一度かかれば終生免疫(めんえき)ができ、二度とかかることはありません。
●流行する季節
 冬から春にかけて流行することが多いものです。
[症状]
 約2週間の潜伏期を経て発病します。急に38~39℃の熱が出て、赤い小丘疹(しょうきゅうしん)が、顔や胸から始まって全身にまばらに現われ、小豆(あずき)大の水疱となり、やがて膿疱(のうほう)になります。2~3日で膿疱は乾いてしぼみ、黒褐色のかさぶたになり、7~10日で脱落して治ります。
 これらのいろいろの発疹が、つぎからつぎへと現われるので、水疱、膿疱、かさぶたが混在してみられます。
 発疹の数が少ないと、38~39℃の発熱で、3~4日で下がりますが、発疹の数が多いと、39℃前後の熱が1週間ほど続くことがあります。
●異常経過
 他の病気の治療のために副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモンや代謝拮抗剤(たいしゃきっこうざい)を使用している子ども、白血病(はっけつびょう)や免疫不全の子どもがこの病気にかかると、重い経過をたどる出血性水痘(しゅっけつせいすいとう)になります。
[治療]
 重くならずに治るのがふつうです。高熱や重症のときは小児科医の治療を受けましょう。入院してアシクロビルの点滴静注が必要なこともあります。
●看護のポイント
 水疱をかきむしって細菌が感染し、化膿(かのう)するとあとが残りますから、水疱が破れたところはピオクタニン液で消毒し、抗生物質を内服して化膿するのを防ぎます。
[予防]
 感染力が強いので、水疱がすべて痂皮(かひ)(かさぶた)になるまで幼稚園や学校は休ませます(学校保健法の規定)。
 帯状疱疹も同じウイルスの感染でおこります。帯状疱疹にかかっている家族がいると、ウイルスが感染して子どもに水痘がおこりますから、帯状疱疹の人と子どもを接触させないようにしましょう。
 予防に有効な予防接種もあります。

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改訂新版 世界大百科事典 「水痘」の意味・わかりやすい解説

水痘 (すいとう)
chicken pox
varicella

俗に水疱瘡(みずぼうそう)とも呼ばれる,幼児,学童に多い伝染病。伝染力がつよく,6月ころに小流行をみることがある。ヘルペスウイルスのなかまである水痘-帯状疱疹ウイルスvaricella-zoster virusの感染によりおこる。ウイルスは,唾液の飛沫などによって気道から進入し,ウイルス血症をおこして,皮膚に紅斑,水疱を生ずる。潜伏期は10~21日,平均14日である。1~2日の発熱,不機嫌,食欲不振,全身倦怠感などの前駆症にひき続いて,全身,とくに体幹,顔面,頭部,口腔粘膜などに小紅斑を生じ,まもなく小水疱となる。数日で水疱内容は混濁して膿疱となり,やがて黒褐色の痂皮(かさぶた)となり,これが2週間程度で脱落して治癒する。ときに瘢痕(はんこん)を残すこともある。40℃までの発熱が4,5日続き,つよい搔痒(そうよう)感(かゆみ)を伴うこともあるが,一般に小児では軽症のことが多く,予後はよい。しかし,成人が罹患した場合や,副腎皮質ホルモン剤や免疫抑制剤を使用している患者,悪性腫瘍などにより免疫が低下している患者では,肺炎などを併発して重症となることもある。すべての発疹が痂皮となれば,他人に伝染することはない。一度水痘にかかれば免疫ができて二度とかかることはないが,水痘罹患後に,ウイルスは神経細胞の中に潜伏して,宿主の抵抗力が低下したときに,再び活性化されて,神経に沿って皮膚に至り,帯状疱疹をおこすことがある。帯状疱疹の患者から感染した小児は水痘となるが,水痘から伝染して帯状疱疹となることはない。

 治療としては,一般に軽症の場合には,安静にして,細菌の2次感染を防ぐ目的で抗生物質軟膏を外用し,解熱剤や,搔痒がつよい場合には抗ヒスタミン剤を服用する。免疫低下のある患者が罹患した場合や,このような患者に感染のおそれのある場合には,帯状疱疹が治癒した人の〈治癒直後の血清zoster immunoglobulin〉を用いると有効である。水痘は学校伝染病に指定されており,〈痂皮がすべて脱落するまで〉の間は学校長が出席を停止させることができることが〈学校保健法〉によって定められている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「水痘」の意味・わかりやすい解説

水痘
すいとう
varicella; chicken pox

俗に水ぼうそうという。水痘・帯状疱疹ウイルス感染により主として幼小児に起る急性の発疹性疾患。初感染後,神経節内に潜伏していたウイルスが,何年も経ってから再活性化したときの病像を帯状疱疹という。感染経路は患者の水疱内液による直接感染,咳,くしゃみによる飛沫感染,または水痘にかかった妊婦から胎児への経胎盤感染 (先天性水痘) である。伝染力は水疱出現の1日前から水疱が乾燥するまでといわれる。水痘の潜伏期は 10~20日 (平均 14日) で,軽度の発熱 (ときに 40℃以上になることもある) ,食欲不振などを前駆症状として発病する。紅暈,中心臍窩 (陥没) のある小水疱が全身に散在状に生じ,それはやがて膿疱化,壊死性となり,痂皮をつくって治癒する。病変は口腔粘膜,特に軟口蓋から硬口蓋移行部に好発する。頸部,腋窩部,鼠径部,股部などの表在性リンパ節の腫脹を合併する。その大部分は容易に治癒するが,まれに脳炎,肺炎,汎発性水痘 (脳,肺,肝,腎,脾,骨髄なども侵される) を併発し,予後不良となる。成人がかかった場合は一般に比較的重症で,入院加療を要することが多い。

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百科事典マイペディア 「水痘」の意味・わかりやすい解説

水痘【すいとう】

水疱瘡(みずぼうそう)とも。水痘帯状疱疹(ほうしん)ウイルスによる小児伝染病で,学校伝染病に指定。成人が感染すると重症化することがある。伝染力が強いが,一度かかると終生免疫を得る。軽度の発熱,毛髪部を含む全身に赤い小丘疹を生じ,やがて小豆大の水疱となり,膿疱に変わる。膿疱は2〜3日で乾き,2週間くらいでかさぶたがとれ多くは瘢痕(はんこん)を残さずになおる。特効薬はなく,かゆみを止める処置をし,かさぶたが生ずるまで患者を隔離する。
→関連項目ライ症候群

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普及版 字通 「水痘」の読み・字形・画数・意味

【水痘】すいとう

水疱瘡。

字通「水」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の水痘の言及

【潜伏感染】より

…宿主生体のなかで,病原体が潜伏感染を続けて,終生臨床症状をあらわすことなく過ごすこともあるが,宿主生体の抵抗力が低下した際,再発して臨床症状を認めることも少なくない。このような例として,単純ヘルペス感染症,水痘と帯状疱疹,サイトメガロウイルス感染症,梅毒,結核などがあげられる。幼児期の単純ヘルペスは初感染として歯肉口内炎やヘルペス湿疹となり,ウイルスは三叉(さんさ)神経節に潜伏感染して,再発すると口唇ヘルペス,角膜炎,脳炎となる。…

【帯状疱疹】より

…水痘・帯状疱疹ウイルスによる感染症。ヘルペスの一種。…

【ヘルペス】より

…ヘルペスウイルスによる感染症で,疱疹とも呼ばれる。単純ヘルペスherpes simplexと水痘および帯状疱疹とに大別されるが,ここでは単純ヘルペスについて述べる。単純ヘルペスは,主として口唇,外陰部などに集団をなして小さな水疱を形成し,数日で糜爛(びらん)して乾燥し,1週間前後で治癒する。…

※「水痘」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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