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ホルモン ホルモンhormone

翻訳|hormone

10件 の用語解説(ホルモンの意味・用語解説を検索)

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ホルモン
ホルモン
hormone

微量にもかかわらず生体における代謝,神経伝達,発生,分化などのあらゆる生体活動の調節機構に密接に関与する一群の物質のうち,その生物自体の器官または組織でつくられるものをいう。現在,ホルモンと認められているものは 50種以上あり,さらにふえ続けている。

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知恵蔵の解説

ホルモン

生体内の内分泌器官でつくられ、体液を通じて他の場所に運ばれて特定の細胞や組織、器官の活動に影響を及ぼす物質の総称。微量でも作用を及ぼすのが特徴。標的細胞のホルモン受容体と結合することによって特異的な活動を開始させ、生殖器官の発達や性行動、変態、代謝などを制御する。物質的にはステロイド(性ホルモン昆虫ホルモンエクジソン)、ペプチド(インシュリン脳下垂体ホルモン)、アミノ酸誘導体(アドレナリン甲状腺ホルモン)が主なもの。広義にはフェロモン植物ホルモンも含める。

(垂水雄二 科学ジャーナリスト / 2007年)

出典|(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」
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デジタル大辞泉の解説

ホルモン(〈ドイツ〉Hormon)

生体内の内分泌腺で生成され、血液中に分泌されて運ばれ、特定の器官にのみ作用する微量の化学物質。成分はたんぱく質ポリペプチドフェノール誘導体・ステロイドなど。

ホルモン

食用にする牛や豚などの内臓。焼いたり鍋料理にしたりする。
[補説]名は、かつては捨てていた部位であることから「放(ほう)るもん(捨てるもの)」に由来するともされる。

出典|小学館
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百科事典マイペディアの解説

ホルモン

生体の特定の器官(内分泌腺)で産生されて導管によらず直接血液中に分泌(内分泌)され,産生器官とは離れた場所にある特定の組織あるいは器官に変化を生じさせる物質をいう。
→関連項目アドレナリン環境ホルモン環状AMPステロイドホルモン内分泌プロスタグランジン分泌

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト
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栄養・生化学辞典の解説

ホルモン

 生体内,とくに内分泌腺で合成され分泌される生理活性物質.従来はホルモン産生器官と,標的となる標的器官が明確に区別されたが,近年,従来は内分泌器官とよばれなかった組織,たとえば心臓や脂肪組織でもホルモンが産生されることが明らかにされ,定義が変わりつつある.生理活性物質でもヒスタミンなどは,通常オータコイドといわれ,ホルモンと区別される.

出典|朝倉書店
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生活習慣病用語辞典の解説

ホルモン

体内の特定の組織や器官で産生される化学物質で、血液中に分泌され、血液によって運ばれて作用します。ホルモンによって、働きかける臓器や内容は異なります。たとえば、すい臓から分泌され血糖を低下させるインスリン、副腎から分泌されストレス反応に働きかけるアドレナリンなど、さまざまな種類があります。

出典|あなたの健康をサポート QUPiO(クピオ)
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世界大百科事典 第2版の解説

ホルモン【hormone】

広義には植物ホルモンフェロモンなど,特殊な生理作用を有する生物の分泌物を含むが,狭義には動物の内分泌腺から血液中に分泌され,体内に広くいきわたって,一定の器官(これを標的器官という)あるいは身体全体の組織に作用を及ぼし,個体の種々の機能を正常に維持するように働く物質と定義される。ある場合には,内分泌腺の組織から分泌され,隣接する組織に直接作用することもある。ホルモンは生体内にまったく新しい反応系や現象をひき起こすものではなく,すでにあるものを刺激したり,抑制するものである。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト
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大辞林 第三版の解説

ホルモン【Hormon】

体内の特定の組織または器官で生産され、直接体液中に分泌されて運ばれ、特定の組織や器官の活動をきわめて微量で調節する生理的物質の総称。甲状腺ホルモン・副腎皮質ホルモン・雌雄性ホルモンや、昆虫の変態ホルモンなど。

出典|三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ホルモン
ほるもん
hormone 英語 フランス語
Hormonドイツ語

生体内でつくられ、その個体の形態形成、代謝、成長、行動発現その他の生理的過程に特定の影響を及ぼす物質をいう。1905年イギリスの生理学者スターリングErnest Henry Starlingによって提唱された用語である。彼はベイリスWilliam Maddock Bayliss(1860―1924)との研究で十二指腸から分泌されるセクレチンを発見(1902)し、「内分泌」というC・ベルナールの用語では不十分と感じて、「ホルモン」の語を彼の講演会で提案した。彼の定義、「動物体内の特定の腺(せん)(内分泌腺)で形成され、血液中に分泌され、その腺から遠く離れた体内の他の器官(標的器官とよぶ)に運ばれ、そこで、微量で特殊な影響を及ぼす物質」はただちに一般に受け入れられたが、その後、血液を介して運ばれず、すぐ隣の細胞や自らの細胞に作用するものも含まれるようになり、広い意味をもつようになった。
 なお、植物ホルモンや、自然界に存在するものと化学構造は異なるが化学的に合成され類似の作用をもつものもホルモンとよぶ。[川島誠一郎]

ホルモンの化学的分類

ホルモンは、分子量の大きな成長ホルモンや生殖腺刺激ホルモンなど下垂体前葉ホルモンや、インスリンや視床下部ホルモンなどのタンパク質‐ポリペプチド系ホルモン、小分子のアドレナリンやチロキシンなどのアミノ酸誘導体ホルモン、同じく小分子の副腎(ふくじん)皮質ホルモンや性ホルモンなどのステロイドホルモン、プロスタグランジンのような脂肪酸誘導体ホルモンなどに分けられる。このうち、アミノ酸誘導体系、ステロイドホルモンおよび脂肪酸誘導体ホルモンは、ほとんどすべて分子構造が決定されており、合成できるものが多い。タンパク質‐ポリペプチド系ホルモンの多くはアミノ酸配列が決定されており、合成できるものもある。ホルモンの研究(内分泌学)の歴史においては、ホルモンの作用機構の研究と併行して、ホルモンの精製、分子構造の決定、合成、ホルモンの受容体や遺伝子の研究が行われてきた。ホルモンを純化することは、微量でも別のホルモンが混入していると作用が異なるためにその意義が大きいのであるが、血糖量の調節にあずかるインスリンとグルカゴン(膵臓(すいぞう)のランゲルハンス島の細胞が分泌する)の純化にその好例をみることができる。すなわち、本来血糖値を下げる粗製インスリンを注射すると、逆に一時的に血糖値が上昇する現象がみられた。これを調べるうちに、粗製インスリン中に別種のホルモンが含まれていることがわかり、グルカゴンの発見につながった。[川島誠一郎]

ホルモンの作用

脊椎(せきつい)動物でも無脊椎動物でも動物には体内の状態を一定に保つ仕組み、すなわちホメオスタシス(恒常性ともいう)を維持する仕組みが備わっている。ホメオスタシス維持機構には内分泌系、自律神経系、免疫系が重要な役割を果たしている。自律神経系と多くの内分泌系の中枢は、間脳視床下部にあり、活動が調節されている。たとえば、ヒトの血糖は100ミリリットル当り約100ミリグラムに保たれ、体温は1日の間に1℃以内の変動しかない。血液中の塩分濃度が一定に保たれているのは、内分泌系と自律神経系が働いた結果であり、とくにホルモンの果たす役割が大きい。
 ホルモンは成長の仕方や分化の方向も決定する。たとえば、オタマジャクシが変態してカエルになり陸上生活ができるようになるのはおもに甲状腺ホルモンの作用である。硬骨魚類の生殖腺が卵巣になるか精巣になるかの決定、生殖輸管が輸精管になるか輸卵管と子宮になるかの決定、ニワトリのとさかの成長の調節などもホルモンの作用による。
 渡り鳥が新しいじょうぶな羽に換羽してから渡りを開始したり、雄ネコが雌ネコを追い回したり、サケが産卵のために生まれた川をさかのぼるなどの動物の行動発現にも、ホルモンは直接的または間接的に作用している。[川島誠一郎]

脊椎動物のホルモン

全脊椎(せきつい)動物に共通した内分泌腺(内分泌器官)は、松果体・視床下部・下垂体・甲状腺・ランゲルハンス島・副腎・生殖腺である。下垂体前葉と後葉は全脊椎動物がもっているが、中葉は鳥類とある種の哺乳(ほにゅう)類にはない。副甲状腺(上皮小体)は両生類以上がもっている。鰓後腺(さいこうせん)は魚類・両生類・爬虫類・鳥類にあるが、円口類(無顎類の一部)にはない。哺乳類は鰓後腺を欠くが、甲状腺にカルシトニンを分泌するC細胞がある。子宮は哺乳類だけにあり、内分泌機能をもっている。これらが分泌するホルモンのうち主要なものについて述べる。[川島誠一郎]
視床下部ホルモン
視床下部は、下垂体前葉や中葉に達し、そこで個々のホルモンの分泌を促進したり抑制したりするホルモンを生産する。1種類の下垂体細胞に対して1ないし数種類の視床下部ホルモンが関与している。これらのホルモンには、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(略号TRH。アミノ酸残基数3)、生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH。黄体形成ホルモン放出ホルモン、略号LRHともいう。アミノ酸残基数10。濾胞(ろほう)刺激ホルモン放出ホルモン作用をあわせもっている)、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH。アミノ酸残基数41)、成長ホルモン放出因子(GHRH。アミノ酸残基数40と44:ヒト)と放出抑制ホルモンのソマトスタチン(アミノ酸残基数14と28)、プロラクチン放出ホルモン(PrRH。アミノ酸残基数20と31)と抑制因子(ドーパミン)、中葉から分泌される黒色素胞刺激ホルモンの放出因子(MRF)と抑制因子(MIF)などがある。「――因子」という用語は、その物質の化学的性質が解明され、それが生理的に働いていることが確認されれば、「――ホルモン」という名称に変更される。以上のほかに下垂体後葉に貯蔵され、そこから放出される後葉ホルモンも、実際には間脳視床下部にある特殊な神経分泌細胞で生産されている。神経分泌細胞のつくる神経分泌物質は大分子のタンパク質で、この分子の一部分として後葉ホルモンはまとめて生合成される。神経分泌物質は軸索の中を通って後葉に運ばれ、必要に応じて血液中に放出される。大分子のタンパク質が分解して生じた後葉ホルモンには、脊椎動物全般を通じて10種類が知られており、すべてアミノ酸残基数9である(2分子のシステインがS‐S結合によりシスチンとなっているためシスチンとして数えると残基数8となる)。後葉ホルモンは分子進化のよいモデルで、祖先分子はアルギニンバソトシンと考えられている。アルギニンバソトシンに出発し、アルギニンバソプレッシン、リジンバソプレッシン、リジンバソトシン、イソトシン、メソトシン、オキシトシン、グルミトシン、バリトシン、アスパルグトシンなどが突然変異の積み重ねで生じたと考えられている。後葉ホルモンの標的器官は腎臓、膀胱(ぼうこう)、子宮、乳腺などである。[川島誠一郎]
下垂体前葉および中葉のホルモン
下垂体後葉は神経組織の一部であるが、前葉と中葉はラトケ嚢(のう)(胎生期に現れる、咽頭(いんとう)の粘膜上皮が間脳下面に向かって伸びた袋状の切れ込み)が脳底に接して分化したもので、腺性下垂体とよばれる。腺性下垂体前葉から分泌されるホルモンのうち、成長ホルモン(GHまたはSTH)とプロラクチン(PRL)はアミノ酸残基数約200の単純タンパク質である。甲状腺刺激ホルモン(TSH)、濾胞刺激ホルモン(FSH)および黄体形成ホルモン(LH)は、いずれも分子中に炭水化物を含む糖タンパク質で、二つのサブユニットからなり、アミノ酸配列もよく似ている。FSHとLHをあわせて生殖腺刺激ホルモン(GTH。ゴナドトロピンともいう)とよぶ。このほかに前葉の分泌するホルモンに副腎皮質刺激ホルモン(ACTH。アミノ酸残基数39)と脂肪動員ホルモン(2種類ある。β(ベータ)リポトロピン、略号β‐LPHはアミノ酸残基数90。γ(ガンマ)リポトロピン、略号γ‐LPHは同58)がある。中葉の分泌するホルモンに黒色素胞刺激ホルモン(2種類ある。略号α(アルファ)‐MSHはアミノ酸残基数13。β‐MSHは同18)がある。ACTH、LPHおよびMSHはすべてプロオピオメラノコルチンという前駆体ホルモンの分解によって生ずる。前葉と中葉のホルモンはすべて下位の標的器官に作用する。[川島誠一郎]
甲状腺ホルモン
甲状腺はヨウ素を分子中に含むチログロブリンという糖タンパク質を蓄えているが、甲状腺刺激ホルモンはこの分解を促進する。分解産物中の甲状腺ホルモンのおもなものがチロキシンとトリヨードチロニンである。これらには、ヒトをはじめ脊椎動物一般に対して代謝や変態促進の作用があり、たとえば、両生類の変態促進作用のほか、爬虫(はちゅう)類の脱皮や鳥類の換羽を促進する。[川島誠一郎]
副甲状腺ホルモン
副甲状腺(上皮小体)は哺乳類では甲状腺上に小塊として付着するか、その付近にある。このホルモンは副甲状腺ホルモン(PTH。パラトルモンともいう。アミノ酸残基数84)で、血液中のカルシウムを増加させる。副甲状腺を摘出された動物では、血液中のカルシウム濃度が低下するために神経の興奮性が高まり、テタニーの発作をおこして窒息死を遂げることが多い。PTHの分泌調節は血液中のカルシウム濃度の副甲状腺に対する直接作用でなされ、下垂体の直接的支配は受けていない。魚類は副甲状腺を欠き、鰓後腺とスタニウス小体とによってカルシウム代謝を調節している。[川島誠一郎]
鰓後腺ホルモン
魚類から鳥類までは鰓後腺が独立した器官として存在するが、哺乳(ほにゅう)類では鰓後腺の細胞は甲状腺中のC細胞として散在する。このホルモンはカルシトニン(アミノ酸残基数32)で、副甲状腺ホルモンと拮抗(きっこう)的に作用し、血液中のカルシウム濃度を低下させる。[川島誠一郎]
膵臓ホルモン
膵臓は、膵液を分泌する外分泌腺と、その中に散在する内分泌腺のランゲルハンス島(膵島)からなっている。島の主体をなすB細胞(β細胞ともいう)はインスリンを分泌する。インスリンは分子量約6000のタンパク質であるが、初め大分子のプロインスリンとして生産される。ヒトのプロインスリンはアミノ酸残基数84の1本鎖のペプチドであるが、中間の結合ペプチド(C鎖)が除去され、2個のS‐S結合で結ばれたA鎖とB鎖からなるインスリンが残る。インスリンの作用で血糖は肝や筋肉に取り込まれ、グリコーゲンとして貯蔵される。また組織における利用も促し血糖値を下げる。島の周辺部に主として分布するA細胞(α細胞ともいう)から分泌されるグルカゴンは分子量3482で29個のアミノ酸残基からなり、インスリンと拮抗的に働く。[川島誠一郎]
胃腸ホルモン
胃、十二指腸、小腸の粘膜に散在する内分泌細胞で分泌される活性ペプチドは20種類以上知られている。そのうちのガストリン(アミノ酸残基数17)は胃液分泌を促進する。セクレチンは、胃液によって酸性になった食物が十二指腸に達するとその粘膜から分泌され、膵臓に運ばれ、膵液の分泌を促進する。セクレチンは27個のアミノ酸からなっている。コレシストキニン(アミノ酸残基数39)は胃幽門部と小腸起部の粘膜から分泌され、胆汁放出と膵液分泌を促進する。コレシストキニンのC末端33個のCCK‐33のほか、CCK‐8、CCK‐4もみいだされている。ホルモン作用のある活性ペプチドには以上のほかに、ガラニン、モチリン、ボンベシン、ニューロテンシン、ソマトスタチン、グレニン、ニューロペプチドYなどが知られている。[川島誠一郎]
副腎皮質ホルモン
副腎は発生の異なる二つの部分からなっている。一つは中胚葉(はいよう)起原の副腎皮質であり、他は外胚葉起原で交感神経節と相同の副腎髄質である。哺乳類では皮質が中央部の髄質を覆っているが、動物によっては両組織が混在したり(両生類、鳥類、一部の爬虫類)、逆転したり(トカゲ)、それぞれがいくつかの小塊として散在する(魚類)。副腎皮質ホルモンはコルチコイドと総称され、糖質コルチコイドと鉱質コルチコイドに分けられる。糖質コルチコイドは動物がストレス状態にあるとき、ストレスの種類に関係なく分泌が高まる。糖質コルチコイドの名称は、タンパク質に作用してブドウ糖(血糖)に変化させる糖新生を行うことによる。糖質コルチコイドとしてはヒトでは主としてコルチゾールであるが、ネズミとウサギでは主としてコルチコステロンが分泌される。鳥類、爬虫類、両生類はおもにコルチコステロン、魚類はおもにコルチゾールを分泌する。鉱質コルチコイドは血液中の電解質の代謝にとって重要な調節作用を営む。糖質コルチコイドの分泌は副腎皮質刺激ホルモンによって促進されるが、鉱質コルチコイドの分泌は下垂体と関係なしにもおこる。腎臓の傍(ぼう)糸球体細胞のつくる酵素レニンが血液中のアンギオテンシノーゲンに働いて、アンギオテンシンというアミノ酸残基10個のものを切り出す。アンギオテンシンが血液中の転換酵素によってアミノ酸残基8個のアンギオテンシンになり、副腎皮質を刺激して鉱質コルチコイドの分泌を促す。両生類より哺乳類までのおもな鉱質コルチコイドはアルドステロン、ほとんどの魚類では11‐デオキシコルチゾールまたは11‐デオキシコルチコステロンである。なお、コルチコイドはステロイドホルモンである。[川島誠一郎]
副腎髄質ホルモン
副腎髄質からはアドレナリンとノルアドレナリンが分泌される。アドレナリンは心臓に作用して血液の拍出量を増加させ、血圧を高める。また、血糖値を高める。著しいストレス状態にあるときには副腎髄質ホルモンが分泌される。[川島誠一郎]
生殖腺のホルモン
精巣と卵巣は生殖細胞をつくることが本来の機能であるが、内分泌器官でもあり、ステロイドホルモンを分泌する。生殖腺のステロイドホルモンは雄性ホルモンと雌性ホルモン(発情ホルモンと黄体ホルモンからなる)に分けられる。
 雄性ホルモン(男性ホルモン)は精巣の分泌するおもなホルモンであり、テストステロンとアンドロステロンがある。テストステロンは作用するときに組織で5α‐ジヒドロテストステロンに変わる。雄性器官を発達させ、雄の二次性徴(ニワトリのとさか、ヒトのひげなど)を発現させる。
 雌性ホルモン(女性ホルモン)のうち発情ホルモンは、卵巣の濾胞から主として分泌され、輸卵管、子宮、腟(ちつ)を発達させ、それらの機能を維持するほか、雌性性徴を発現させる。発情ホルモンにはエストラジオール、エストロン、エストリオールが知られているが、エストラジオールがもっとも作用が強い。黄体ホルモンは卵巣の黄体から主として分泌され、子宮に作用し卵の着床を準備するとともに妊娠を維持する。黄体ホルモンのほとんどはプロゲステロンである。
 卵巣は雌性ホルモンだけでなく雄性ホルモンも分泌する。精巣が異性ホルモンを分泌するのは例外的であるが、ヒトでは精巣が発情ホルモンを分泌している。副腎皮質は、雌雄ともに雄性ホルモンを微量ながらも分泌する。[川島誠一郎]
胎盤のホルモン
胎盤はさまざまなホルモンを分泌する。胎盤形成初期には絨毛(じゅうもう)膜から生殖腺刺激ホルモン(CGH。FSHやLHと同じく2個のサブユニットからなる)が分泌され、卵巣の黄体を刺激し、胎盤を発達させる。胎盤が発達すると、胎盤性プロラクチン、エストラジオール、プロゲステロンなどが分泌される。この時期になると妊娠維持の主役が卵巣から胎盤へ移行する哺乳類が多い。妊娠末期になると、胎盤のプロゲステロン分泌が低下し、逆に子宮収縮作用のあるプロスタグランジンF2αの分泌が増し、やがて分娩(ぶんべん)を迎える。分娩に先だち卵巣からリラキシンが分泌され、恥骨結合を緩め、分娩時の産道開大を容易にする。[川島誠一郎]
その他のホルモン
松果体はすべての脊椎動物にあるが、魚類、両生類、爬虫類では内分泌器官として働いている証拠が弱く、むしろ光受容器である。哺乳類と鳥類ではホルモンとして作用するメラトニン(生殖腺刺激ホルモンと黒色素胞刺激ホルモンの放出を抑制する)を分泌するので松果腺とよんでよい。
 魚類にのみある尾部下垂体は、脊髄後方に散在する神経分泌細胞の軸索末端が集合した部分で、その形式において下垂体後葉に似ている。アミノ酸残基41個のウロテンシンとアミノ酸残基11個のウロテンシンがある。ともに魚類で血圧を上昇させる作用がある。スタニウス小体も魚類にのみある内分泌腺で、血液中のカルシウムを減少させるホルモンを分泌する。[川島誠一郎]

無脊椎動物のホルモン

神経分泌現象は腔腸(こうちょう)動物から高等な節足動物、軟体動物、棘皮(きょくひ)動物に至るまで認められている。無脊椎動物のホルモンはほとんどが神経分泌物質であるが、ある種の無脊椎動物には特別に分化した腺性の内分泌器官があり、ホルモンを体液中へ分泌する。無脊椎動物のホルモンは甲殻類と昆虫類についてよく調べられている。[川島誠一郎]
甲殻類のホルモン
甲殻類は外骨格を周期的に脱ぎ捨てて成長する。この脱皮は拮抗的に働く脱皮促進ホルモンと脱皮抑制ホルモンによって調節されている。脱皮促進ホルモンは、腺性の内分泌器官であるY器官から分泌される。Y器官は甲殻類の種類により存在位置が異なり、カニでは前胸部側面に分布している。脱皮抑制ホルモンは、眼柄(がんぺい)内の神経節終髄にあるX器官で生産され、サイナス腺に運ばれて放出される。
 甲殻類には目覚ましい体色変化をする例が知られており、サイナス腺の色素胞刺激ホルモンが調節している。また、サイナス腺は甲殻類の卵巣の発育を抑制する卵巣発育抑制ホルモンも分泌している。このため、スジエビ、ザリガニ、サワガニなどの眼柄を除去すると、繁殖期以外の時期に卵巣を成熟させることができる。
 多くの甲殻類で、雄性ホルモンは輸精管の末端または精巣の先端に位置する造雄腺(雄性化腺ともいう)から分泌される。造雄腺は精巣の分化と雄性器官と二次性徴の発達に必要で、造雄腺を除去すると雌に似てくる。[川島誠一郎]
昆虫のホルモン
昆虫の孵化(ふか)後の成長はホルモンによって調節されている。カイコではアラタ体のホルモンと前胸腺のホルモンが共同して作用すると幼虫脱皮をおこし、前胸腺ホルモンだけが作用すると脱皮して蛹(さなぎ)になる。したがって、通常は幼虫脱皮をする時期にアラタ体を摘出すると、前胸腺ホルモンだけが作用して蛹化(ようか)する。アラタ体ホルモンは幼虫形質を維持させる働きがあるため、幼若ホルモンという。幼若ホルモンには分子構造がわずかに違う3種類が同定されている。前胸腺ホルモンはステロイドホルモンの一種で、エクジソンという。エクジソンは、脳の神経分泌細胞で合成され、側心体があればそこを通過したのち、アラタ体から放出される前胸腺刺激ホルモン(PTTH)によって分泌が促される。前胸腺刺激ホルモンには分子量約4400と約2万の2種のポリペプチド系ホルモンが知られている。
 卵巣の発達と生殖腺付属器官の発達がどの程度アラタ体に依存しているかは、昆虫の種類によって異なる。ゴキブリ、ハサミムシ、クロバエなどは脳間部の神経分泌細胞を除去するとアラタ体が退化して卵巣が成熟しない。逆にカイコでは、アラタ体を除去すると、早熟的に蛹化するだけでなく卵巣も成熟する。昆虫の種類によっては、前胸腺ホルモンが卵巣の成熟を積極的に促進する。前胸腺ホルモンは一般に成虫形質の発現を刺激し、これがなければ脱皮も変態もおこらない。[川島誠一郎]
その他のホルモン
以上のほかにも多くの無脊椎動物ホルモンが知られている。たとえば、軟体動物の頭足類(タコ、イカ)では、脳と視葉の間に眼腺(視柄上にあるため視柄腺ともいう)という内分泌腺があり、生殖腺刺激ホルモンを分泌する。このホルモン分子自体に雌雄差がないのは哺乳類と同じで、雄がつくるホルモンで卵巣が成熟するし、雌がつくるホルモンで精巣を成熟させることができる。眼腺は視柄下葉によって抑制的影響を受けている。
 環形動物の多毛類(ゴカイ)のある種では脳の神経分泌細胞が発達している。このゴカイを切断しても、体の前方はただちに再生する。しかし脳を除去しておくと再生がみられないことから、再生促進ホルモンの存在が確かめられた。[川島誠一郎]

ホルモンの受容体

ホルモンは血流にのってすべての細胞に到達するのに、ホルモンに反応する細胞と反応しない細胞とがある。これは、反応する標的細胞にはそのホルモンと結合する受容体があるからである。ステロイドホルモンは細胞膜を通過して細胞質内の受容体と結合し、ホルモン‐受容体複合体が核内に入り、遺伝子DNAの特定の配列に結合して転写を調節する。
 一方、タンパク質‐ペプチド系ホルモンは、分子が大きいことと、脂溶性でないために、細胞膜を通過することがむずかしい。これらのホルモンの受容体は標的細胞の細胞膜上に分布していて、ホルモンはこれに結合して細胞内に情報が伝えられる。伝えられた情報は、最終的に転写調節領域を活性化して転写を調節する。
 ホルモン分子は進化の過程で変異し、多様性を増大してきたが、それらの受容体も変異し、働きの多様性を増してきた。[川島誠一郎]
『日本比較内分泌学会編『比較内分泌学序説』『ホルモンの生産と分泌』『ステロイドホルモンの生物化学』『ホルモンと生殖』『ホルモンと生殖』『ホルモンと生殖』『ホルモンと水・電解質代謝』『行動とホルモン』『性分化とホルモン』『ペプチドホルモン』(1976~91・学会出版センター) ▽日本生化学会編『新・生化学実験講座 ホルモン1 ペプチドホルモン』『新・生化学実験講座 ホルモン2 非ペプチドホルモン』(1991、1992・東京化学同人) ▽鎮目和夫編著『成長ホルモンとその関連ペプチド』(1992・朝倉書店) ▽伊藤真次著『シリーズ・脳の科学 脳のホルモン――前頭葉をめぐって』(1993・朝倉書店) ▽ベン・グリースタイン著、麻生芳郎訳『一目でわかる内分泌学――ホルモンと受容体の基礎知識』(1995・メディカル・サイエンス・インターナショナル) ▽ 川島誠一郎著『動物のホルモン』(1995・裳華房) ▽川島誠一郎著『老化とホルモン』(1995・東京大学出版会) ▽川島誠一郎編著『内分泌学』(1995・朝倉書店) ▽日本比較内分泌学会編『ホルモンの分子生物学序説』『成長ホルモン・プロラクチンファミリー』『生殖とホルモン』『甲状腺ホルモン』『ストレスとホルモン』『発生と成長因子・ホルモン』『ホメオスタシス』『無脊椎動物のホルモン』(1996~98・学会出版センター) ▽広瀬茂久著『基礎化学コース 生命科学3 細胞・代謝・ホルモン』(1997・丸善) ▽大石正道著『絵とき ホルモンの科学』(2000・オーム社) ▽第14回「大学と科学」公開シンポジウム組織委員会編『ステロイドホルモンと脳科学――性・ストレス・脳をめぐって』(2000・クバプロ) ▽早稲田大学人間総合センター監修、山内兄人・新井康允編著『性を司る脳とホルモン』(2001・コロナ社) ▽日本比較内分泌学会編『生命をあやつるホルモン――動物の形や行動を決める微量物質』(2003・講談社ブルーバックス)』

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世界大百科事典内のホルモンの言及

【ホルモン剤】より

…各種のホルモンを製剤化し,ホルモン本来の生理作用あるいは薬理作用を利用して,治療または診断の目的に供するものをいう。現在までに実用化されているのは,視床下部,脳下垂体の前・後葉,甲状腺,膵臓ランゲルハンス島,副腎皮質および髄質,性腺,消化管などに由来するホルモンであるが,供給量が十分でないものもある。一般に,これらのホルモンは,食用獣の内分泌器官を原料にして精製されるが,これらに依存しないものや他種のものでは無効なものもある。…

【植物ホルモン】より

…通常,生産された部域から移動して,作用すべき部域へ到達して働く。現在,天然に見いだされる植物ホルモンと同じ作用をもつ合成物質が多数知られている。これら合成物質,および微量で植物ホルモン様活性を示す物質ではあっても必ずしも植物界に普遍的でないものをも含めた場合には,植物調節物質plant regulatorという名称が使われる。…

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