知恵蔵 「耳管開放症」の解説
耳管開放症
代表的な症状として、耳がふさがれたような感じがし、自分の声が大きく反響して聞こえたり、自分の鼻呼吸の音が異常に大きく聞こえたりすることなどが挙げられる。音程が正しく聞き取れない、聞き取りにくい音域ができる、耳が痛いといった耳の症状以外にも、フワフワと浮き上がって揺れるようなめまいが起こることもある。前かがみになったり、横になったりすると症状が緩和するのが特徴である。
飛行機やエレベーターなどで耳が詰まった感じがするのは、中耳腔(ちゅうじこう)と大気圧に差が生じて鼓膜が引っ張られるため。この時、つばを飲み込むと治るのは、耳管が開いて中と外の圧が同じになるからである。耳管にはこのように、中耳腔の圧を調節する働きがある。開いたままになる原因はよくわかっていないが、疲労、ストレス、体重減少などが、発症や悪化のきっかけになるという説もある。
有病率については1%から7%前後まで諸説があり、患者は女性に多いとされている。確立された治療法はまだなく、漢方薬の加味帰脾湯(かみきひとう)の内服や、鼻腔から耳管への薬剤の注射、重症の場合には人工耳管を挿入する外科的治療などが試みられている。軽症例では数日から数週間で完治することもあるが、数年以上にわたって慢性に経過するケースも多い。
(石川れい子 ライター / 2010年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報