耳管開放症(読み)じかんかいほうしょう

知恵蔵 「耳管開放症」の解説

耳管開放症

中耳から鼻の奥につながる管が、通常は閉じているのに、開いたままになる病気。左右両方の耳管が開いている場合を両側(りょうそく)耳管開放症といい、どちらか片方だけの場合は片側(へんそく)耳管開放症という。歌手の中島美嘉は、両側耳管開放症の治療に専念するため、2010年10月に当面の歌手活動を休止することを発表した。
代表的な症状として、耳がふさがれたような感じがし、自分の声が大きく反響して聞こえたり、自分の鼻呼吸の音が異常に大きく聞こえたりすることなどが挙げられる。音程が正しく聞き取れない、聞き取りにくい音域ができる、耳が痛いといった耳の症状以外にも、フワフワと浮き上がって揺れるようなめまいが起こることもある。前かがみになったり、横になったりすると症状が緩和するのが特徴である。
飛行機エレベーターなどで耳が詰まった感じがするのは、中耳腔(ちゅうじこう)と大気圧に差が生じて鼓膜が引っ張られるため。この時、つばを飲み込むと治るのは、耳管が開いて中と外の圧が同じになるからである。耳管にはこのように、中耳腔の圧を調節する働きがある。開いたままになる原因はよくわかっていないが、疲労ストレス、体重減少などが、発症悪化のきっかけになるという説もある。
有病率については1%から7%前後まで諸説があり、患者は女性に多いとされている。確立された治療法はまだなく、漢方薬加味帰脾湯(かみきひとう)の内服や、鼻腔から耳管への薬剤注射重症の場合には人工耳管を挿入する外科的治療などが試みられている。軽症例では数日から数週間で完治することもあるが、数年以上にわたって慢性に経過するケースも多い。

(石川れい子  ライター / 2010年)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「耳管開放症」の意味・わかりやすい解説

耳管開放症
じかんかいほうしょう

正常時は閉鎖している耳管が開放したままの状態になる耳の病気。耳管は耳の奥にある中耳腔(ちゅうじくう)と鼻の奥にある鼻咽腔(びいんくう)をつなぐ管で、大気と中耳の圧を均一に保つ働きをしている。この耳管が開いたままになると、耳がふさがるような耳閉感や自分の声が大きく聞こえる自声強聴(自声強調)、めまいなどの症状を伴い、軽度の難聴を伴うこともある。また長期間持続すると精神不安定となることもある。原因はよくわかっていないが、急激な体重減少などが原因となることがあり、耳管の周りの軟部組織や筋が萎縮(いしゅく)することなどによって起こると考えられる。前かがみの姿勢や寝る姿勢をとると症状が軽減されることがある。決定的な治療はなく、軽度のものは放置して寛解することもあるが、改善がみられない場合は、耳管咽頭(いんとう)口(鼻側の開口部)に薬剤を塗布あるいは注入して腫脹(しゅちょう)させたり、耳管内腔に炎症を起こさせる薬剤を注入して耳管を狭くするなどの治療も検討する。漢方薬が有効な場合もある。

[編集部]

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家庭医学館 「耳管開放症」の解説

じかんかいほうしょう【耳管開放症 Patent Eustachian Tube】

[どんな病気か]
 通常は閉じている耳管が開いているため、外界と鼓室(こしつ)との間を常に空気が交通している状態で、自声強聴(じせいきょうちょう)(「耳管狭窄症」)、耳閉感(じへいかん)、難聴(なんちょう)などがおこります。
 これらの不快な症状を解消しようと、鼻すすりの圧力で強制的に耳管を閉じてしまう癖をもつ子どもがいます。子どもの耳管はやわらかいため、いったん耳管が閉じると、つばを飲み込んでも開かなくなり、これが難治性中耳炎(なんちせいちゅうじえん)を誘発する原因の1つとして注目されるようになりました。鼻すすりの癖は、できるだけ早くやめさせましょう。
 成人では、がんなどで急激にやせて、耳管周囲の脂肪組織の減少や耳管を閉じる軟骨(なんこつ)の弾力が低下しておこります。
[治療]
 耳管の粘膜(ねんまく)を腫(は)れさせる目的で、ホウ酸とサリチル酸の混合粉末を耳管内に噴霧(ふんむ)したり、耳管咽頭口部(じかんいんとうこうぶ)にアテロコラーゲンという物質を注入したりして治療します。

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