聖アントワーヌの誘惑(読み)セイアントワーヌノユウワク(英語表記)La Tentation de saint Antoine

デジタル大辞泉 「聖アントワーヌの誘惑」の意味・読み・例文・類語

せいアントワーヌのゆうわく〔セイ‐のイウワク〕【聖アントワーヌの誘惑】

原題、〈フランスLa Tentation de saint Antoineフロベール長編小説。独白劇風の体裁で書かれた幻想的な小説で、1849年に書かれた第一稿から数度改稿を経て、1874年に決定稿刊行

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「聖アントワーヌの誘惑」の意味・わかりやすい解説

聖アントワーヌの誘惑
せいあんとわーぬのゆうわく
La Tentation de saint Antoine

フランスの作家フロベールの劇形式をとった散文作品。1874年刊。3世紀後半、北アフリカ、テーベの砂漠に庵(いおり)を結んだ実在の聖者アントワーヌを主人公とし、その眼前に一夜の間、肉欲を象徴するシバの女王をはじめ、さまざまな異端の神や偶像、異形の怪物が登場して、誘惑のことばを連ねる。最後に聖者は地上のあらゆる動植物の誕生と成育のさまを幻想に見て、歓喜の叫びをあげたおりしも、夜が明けて、差し昇る日輪のただなかにキリストの顔が輝くのを見て、十字を切り、祈りを捧(ささ)げる。作者の習作時代から27年間に三度も稿を改めたこの執念の作品は、さすがに濃縮された硬質の美に輝き、思想的にも深く窮められている。

山田 

『渡辺一夫訳『聖アントワヌの誘惑』(岩波文庫)』『『聖アントワーヌの誘惑』(渡辺一夫・平井照敏・山田九朗訳『フローベール全集 第四巻』所収・1965・筑摩書房)』

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