職人尽(読み)しょくにんづくし

精選版 日本国語大辞典 「職人尽」の意味・読み・例文・類語

しょくにん‐づくし【職人尽】

〘名〙 種々の職人の名を列挙して、歌や絵などの題材とすること。また、そのもの。
※俳諧・玉海集(1656)三「職人尽しの絵に榑へぎを見て書つく」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「職人尽」の意味・わかりやすい解説

職人尽
しょくにんづくし

いろいろな職人(諸職諸道)と、その業態、生活、服装などを和歌または絵画に表現した作品類。職人が社会的に進出してきた中世の13世紀からみられ、当初は、公家(くげ)が各種の職人に仮託して、月・恋(『東北院職人歌合(うたあわせ)』『鶴岡放生会(つるがおかほうじょうえ)歌合』『七十一番職人歌合』)、花・述懐(『三十二番職人歌合』、内容は十六番)を題として歌合をなしたものである。判者による判詞もあり、職人の口上(『七十一番』)もある。絵は後代に描き加えられたものと思われるが、諸種の写本のみが伝存する。また、近世には、この延長線上に発句合(ほっくあわせ)・狂歌合などが族生した。

 絵を中心にしたものが職人尽絵である。屏風(びょうぶ)(『職人尽絵』埼玉県川越市・喜多院)、画帖(がじょう)、画巻(『職人尽図巻』国立歴史民俗博物館)などに仕立てられている。和歌はなく、各職の見世(住居)をのぞきこむような視角で、製品、道具、工作過程の一端が精細に描かれている。18世紀以後には、浮世絵師鍬形蕙斎(くわがたけいさい)(北尾政美(まさよし))画『近世職人尽絵詞(えことば)』(詞は四方赤良(よものあから)など三者)などの作もある。

遠藤元男

『高取正男・小沢弘編『日本庶民生活史料集成 第30巻 諸職風俗図絵』(1982・三一書房)』『網野善彦・石田尚豊編『近世風俗図譜12 職人』(1983・小学館)』


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