東北院職人歌合(読み)とうほくいんしょくにんうたあわせ

改訂新版 世界大百科事典 「東北院職人歌合」の意味・わかりやすい解説

東北院職人歌合 (とうほくいんしょくにんうたあわせ)

中世に詠作された現存職人歌合の中で一番古いもので,序文によると1214年(建保2)東北院の十三夜の念仏に集まった職人の催した歌合という形をとる。曼殊院旧蔵本は奥書により花園院(1297-1348)の宸筆(しんぴつ)かと推定される。歌合と歌仙絵の流れをうけ,新しく職人を配したものであり作者は堂上の歌人であろう。曼殊院旧蔵本には5番10種,群書類従本には12番24種の職人が登場,とくに曼殊院旧蔵本の職人の姿絵にはすぐれた描写がみられる。中世の職人に対する関心の高まりがうかがえ,また後に続く職人歌合・職人尽絵に与える影響は大きい。
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「東北院職人歌合」の解説

東北院職人歌合
とうほくいんしょくにんうたあわせ

職人歌合の一種。序文に「建保第二(1214年)の秋のころ東北院の念仏に」とあることから,この名でよばれる。1巻。14世紀前半の制作。職人歌合は種々の職人を組み合わせた架空の歌合で,鎌倉後期から流行した。本絵巻はその現存最古の作品とされ,左方に医師,右方に陰陽師(おんみょうじ)など各5人ずつを配し,経師(きょうじ)を判者として月と恋の2題を詠む設定。左右1組の詠者の絵姿と和歌判詞を加えたものを1番として,これを5番くりかえし,巻末に判者の絵姿と歌1首をそえる。絵は歌仙絵風で,実在感のある個性的な面貌が特徴。ほかに12番本の模本が伝わる。縦29.0cm,横588.1cm。東京国立博物館蔵。重文

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世界大百科事典(旧版)内の東北院職人歌合の言及

【職人尽絵】より

…各種の職人の生態を一括して描いた絵。職人を描いた絵は,平安時代の扇面写経や絵巻などに散見されるが,職人の絵がまとまって描かれるのは鎌倉時代の《東北院職人歌合》からである。これは,職人を左右おのおの5番に分けて歌を番(つが)わせ,判者によって勝を決する歌合(うたあわせ)の形式をとり,和歌の間に職人を描く。…

※「東北院職人歌合」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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