日本大百科全書(ニッポニカ) 「職業階層」の意味・わかりやすい解説
職業階層
しょくぎょうかいそう
occupational stratification
職業の同一性に基づいて同一の社会的資源の配分にあずかる者の集合として、同一の社会的地位にあるとみなされる同一の職業従事者の集合体をさす。社会的地位の格差に応じた職業階層の段階的構造の全体が職業的成層である。職業的成層は、実証的次元で社会構造ないし社会的成層を表すものとして扱われている。
職業的成層として、職業を技能ないし熟練の高さに応じた序列に従って配列したものが職業構成である。今日、一般に用いられている職業構成は、専門的職業従事者、管理的職業従事者、事務的職業従事者、販売的職業従事者、熟練労働者、半熟練労働者、非(不)熟練労働者、農民という職業階層の段階的構造としてとらえられている。工業化の進展とともに、この職業構成は絶えず変化しており、工業化社会では、農民の比率が低下し、同じく非熟練労働者の比率も低下していく。これに対して、半熟練労働者の比率が急速に上昇し、熟練労働者の比率も徐々に上昇する。この変化のパターンが頂点に達すると、事務部門と販売部門の従業者が急激に増大し始め、それとともに、専門、管理などの部門の従業者も増大し、各熟練レベルのサービス部門の従業者も急速に増大する、という形で変化している。このような職業構成の変化の過程で、個別の具体的な職業は、技術革新や労働組織の再編成のために変化をきたし、あるものは消滅し、あるものは新たに生まれる。この技術上、組織上の革新のために、職業上の報酬体系や社会関係も変化し、職業上の社会的地位も変化する。
このほか、職業構成を表すものとして、国勢調査で用いられている職業分類がある。今日、世界的に用いられている職業分類は、1940年からアメリカで用いられているもので、日本をはじめ、カナダ、ドイツ、フランス、イタリア、スウェーデンその他で採用されている。
職業階層の段階をつける試みとしては、職業を威信・地位の表示としてとらえ、評定者の評定に基づく職業威信スコアによって個別の職業の序列(職業の格づけ)をつくる例がある。
[本間康平]
『富永健一編『日本の階層構造』(1979・東京大学出版会)』▽『本間康平他編『テキストブック社会学4 職業』(1977・有斐閣)』▽『八木正著『現代の職業と労働』(1972・誠信書房)』