四訂版 病院で受ける検査がわかる本 「肺がんマーカー」の解説
肺がんマーカー
基準値
シフラ………3.5ng/mℓ(EIA法)
SCC ………1.5ng/mℓ(EIA法)
NSE ………10ng/mℓ
ProGRP………46pg/mℓ
SLX ………38U/mℓ
肺がんのマーカーとしては、シフラ(サイトケラチン19)とSCC(扁平上皮がん関連抗原)、NSE(神経特異エノラーゼ)、ProGRP(ガストリン放出ペプチド前駆体)、SLX(シアリルSSEA-1抗原)が測定されています。
肺がんは、組織学的には扁平上皮がん、腺がん、小細胞がんに分類されますが、シフラとSCCは扁平上皮がん、NSEとProGRPは小細胞がん、腺がんにはSLXが特異的とされています。
●シフラ(サイトケラチン19)
サイトケラチンは、上皮性細胞に広く存在しています。そのうちの19フラグメントは、正常でも上皮細胞にごく微量存在しますが、肺(気管支)とくに扁平上皮がんで大量かつ高率に検出されます。
しかし、肺がん以外でも咽頭炎、気管支炎、肺結核、皮膚疾患、慢性肝疾患、腎不全などでも検出されるので、臨床解釈には注意が必要です。
●SCC(扁平上皮がん関連抗原)
SCCは当初、子宮
●NSE(神経特異エノラーゼ)
NSEは、神経組織や神経内分泌細胞に特異的に存在するエノラーゼ(蛋白の一種)で、組織の腫瘍化に伴って血液中に上昇します。
肺がんや神経芽細胞腫、膵がんで上昇します。肺小細胞がんでは60~80%が陽性となり、非小細胞がんでは10~20%の陽性率ですが、陽性の場合は予後が不良です。
●ProGRP(ガストリン放出ペプチド前駆体)
ProGRPは小細胞がん細胞内で産生され、血中に放出されます。肺小細胞がんの特異的なマーカー(35~75%)として検査されます。肺の大細胞がんや扁平上皮がんでも陽性(10~20%)になります。
●SLX(シアリルSSEA-1抗原)
SLXは、ムチン型糖鎖蛋白で、胎生期に形成される気管支腺細胞に存在します。肺がん(腺がん)で陽性となるほか、気管支炎や肺線維症、気管支拡張症、肺結核でも陽性になります。
疑われるおもな病気などは
◆シフラが上昇する病態
①肺がん:扁平上皮がん>腺がん、小細胞がん
②その他のがん:食道がん、咽頭がん、膀胱がん、子宮頸がん、胃がん、大腸がん、膵がん、前立腺がん
③良性呼吸器疾患:咽頭炎、気管支炎、肺炎、肺結核
④その他の良性疾患:胃潰瘍、皮膚疾患、慢性肝炎、腎不全
◆SCCが上昇する病態
①肺がん:扁平上皮がん>腺がん、小細胞がん
②その他のがん:子宮頸がん、頭頸部がん、食道がん、皮膚がん
③良性疾患:呼吸器疾患、婦人科疾患、頭頸部疾患、消化器疾患
◆NSEが上昇する病態
①肺がん:小細胞がん>扁平上皮がん、腺がん
②神経内分泌腫瘍:神経芽細胞腫、インスリノーマ、甲状腺髄様がん
③膵がん:膵島がん
◆ProGRPが上昇する病態
①肺がん:小細胞がん
②腎不全
◆SLXが上昇する病態
①肺がん:腺がん>小細胞がん、扁平上皮がん
②呼吸器良性疾患:細気管支炎、肺線維症、気管支拡張症、肺結核
医師が使う一般用語
シフラ→「シフラ」
SCC→「エスシーシー」=squamous cell carcinoma(扁平上皮がん関連抗原)の略SCCから
NSE→「エヌエスイー」=neuron specific enolase(神経特異エノラーゼ)の略NSEから
ProGRP→「プロジーアールピー」=Pro-gastrin-releasing peptide(ガストリン放出ペプチド前駆体)の略ProGRPから
SLX→「エスエルエックス」=siaryl Lewis X-i抗原の略SLXから
出典 法研「四訂版 病院で受ける検査がわかる本」四訂版 病院で受ける検査がわかる本について 情報