胃腸神経症(読み)いちょうしんけいしょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「胃腸神経症」の意味・わかりやすい解説

胃腸神経症
いちょうしんけいしょう

一般に胃腸あるいは消化器における神経症的な反応、または機能障害を総称していうことが多い。具体的には、不安発作が中心の不安神経症、過度の注意集中、とらわれによって生ずる心気神経症、欲求不満や葛藤(かっとう)が適切に処理できず、無意識的な心の防衛機制(からくり)によって身体症状に置き換えられ、疾病への逃避傾向が強い転換ヒステリー、および抑うつ状態を中心とした抑うつ神経症など、本来の神経症で胃腸症状を呈するもの以外に、NUD(Non‐Ulcer Dyspepsia、上腹部不定愁訴症候群)、過敏性腸症候群、胆道ジスキネジーのように、消化管や胆道系統に固定化して、持続的に機能障害を呈する、いわゆる器官神経症をも含めて用いられる。症状としては、食欲不振、胃部重圧感、腹部膨満吐き気嘔吐(おうと)、便秘、下痢腹痛げっぷ、腹鳴、放屁(ほうひ)、体重減少など種々の不定な胃腸症状がある。

 胃腸神経症と診断するためには、十分な諸検査によって器質的な病変や、統合失調症精神分裂病)、うつ病などの精神疾患を除外するとともに、食道、胃腸、胆道などの運動機能検査によって客観的に機能異常の所見を肥握し、さらに面接による生活史の調査や心理テストによって、その病状が心理的な原因によって生じたことを明らかにする必要がある。なお一部の症例は、かならずしも心理的な原因が明らかでなくても、過労気候の変化、体の冷えなどで自律神経失調をきたして症状を呈することもある。治療としては、病状の性質に応じて、生活指導、食事療法、薬物療法および各種の心理療法が適宜組み合わされて用いられる。

[中川哲也]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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