日本大百科全書(ニッポニカ) 「胡万春」の意味・わかりやすい解説
胡万春
こまんしゅん / フーワンチュン
(1929― )
中国の小説家。本籍浙江(せっこう/チョーチヤン)省鄞県(ぎんけん)、上海(シャンハイ)生まれ。労働者出身。ほとんど字が読めなかったが、姚文元(ようぶんげん/ヤオウェンユアン)らに導かれて創作を始めた。短編『肉親』(1955)で脚光を浴び、その後、青年労働者や壮年の熟練工など、社会主義体制下の労働者群像を活写する短編を数多く発表した。1964年には、話劇『激流をおかして』を発表、優秀シナリオと評された。この間、『労働報』『萌芽(ほうが)』の編集に参加し、また『中国青年報』『人民日報』の特約記者となった。文化大革命中、毛沢東(もうたくとう/マオツォートン)の文芸路線を擁護し、上海作家協会革命委員会の要職についた。短編集『青春』(1956)、『光は大地を照らす』(1961)のほか、文革後、「四人組」を批判した短編『序幕』(1977)を発表した。ほかに水上生活者の活躍を描いた長編『蛙女』(1983)がある。1983年には、『胡万春中編小説集』が出され「特殊な性格」など8編が収められた。ところで胡万春は、90年代の初めに上海で書店を2店開いている。
[前田利昭]
『『新しい人間像』(1961・北京外文出版社、東方書店発売)』▽『伊藤克訳『中国革命文学選4 光は大地を照らす』(1963・新日本出版社)』▽『久米旺生ほか訳『現代中国文学11 短篇集』(1971・河出書房新社)』▽『中国語研修学校翻訳班編訳『現代中国革命文学集9 文化大革命短篇集』(1975・東方書店)』▽『相浦杲著『求索――中国文学語学』(1993・未来社)』