日本大百科全書(ニッポニカ) 「脳卒中発症確率」の意味・わかりやすい解説
脳卒中発症確率
のうそっちゅうはっしょうかくりつ
今後10年間に、ある個人が脳卒中になる確率。この算出法を、藤田保健衛生大学(現、藤田医科大学)教授の八谷寛(やつやひろし)らが国立がん研究センターと共同で開発し、2013年(平成25)に発表した。年齢、性別、喫煙の有無、肥満度、血圧、降圧剤(血圧降下薬)の服用、糖尿病の7項目を点数化し、合計点によって確率を予測しパーセントで表す。40~69歳の1万5000人以上を14年間にわたって追跡調査し、そのうち脳卒中に陥った790人を分析することでこの計算式を得た。また発症確率だけでなく「血管年齢」も同時に推定し、血管が加齢している事実をわかりやすく示し、健康指導に活用しやすくしている。具体的には、リスク因子のない理想的な成人と比べて、高血圧や糖尿病などリスク要因をもつ成人の血管がどれだけ加齢しているかを「血管年齢」としてグラフで比較できるため、血管の老化度すなわち動脈硬化の進行度も予測できる。7項目のうち肥満度の判定に用いられるBMI(body mass index)は体格指数のことで、体重(キログラム)を身長(メートル)の2乗で割って求める。22を標準とし、25以上を肥満とする。この計算式では、たとえばBMI28(2点)で喫煙習慣はなく(0点)、糖尿病でもなく(0点)、降圧薬を内服せずに血圧が139/88ミリメートル水銀柱(mmHg)(6点)の55歳(12点)男性(6点)の場合、合計点は26点で脳卒中となる確率は4%以上5%未満となる。年齢が高くなればそれだけ血管壁は脆弱(ぜいじゃく)となり、脳卒中の確率も高まるため点数も高く、また男性は女性に比べて脳卒中になる確率は2倍ほどなので6点が加算される。また、女性では喫煙の影響が大きいことから、喫煙習慣がある女性は8点(男性の場合は4点)が加算される。ほかに高血圧の場合の脳卒中発症リスクが高いため、血圧が高くなるほど点数は増える。これに糖尿病があれば7点が加算され、また肥満度(BMI)が増すほど点数は上がり、発症確率は高まる。
[編集部]