莫臥児とも書き,モール織とモール糸とがある。織物のモールは紋織物の一種で,16世紀ころに舶載された金銀糸入りの外来の染織品。名称の由来は産出されたインドのムガル帝国の〈ムガル〉の転訛であるといわれる。今日名物裂として珍重されているものは,一般に平地に段,あるいは竪縞の構成で,多様な花唐草を撚金糸,撚銀糸を交えて織りだしたものが多いが,なかには二重織(風通(ふうつう)),繻子(しゆす)地合いのものもある。江戸時代に日本で織製されたものは,絵緯(えぬき)を別搦み糸で押さえて文様を織りだしたもので,特に江戸時代後期には女帯地に活用された。また経に生糸,緯に金糸を織り入れた細幅織物は肩章などに供されたもので,これも〈モール〉と呼んでいる。
モール糸には2種あり,(1)はシェニール糸chenille yarnと同様の飾り糸で,経糸3,4本を一組として互いに間隔をおいて整経し,普通に平織した後に各組の中間(経糸が整経されなかった部分)を縦に裁ち切り,撚りをかけて作られる。(2)は甘い撚り糸を芯に,強撚り糸を巻きつけて作るもので,絹糸製は肩章類に,麻糸製や絹糸と木綿糸の混製糸などは帽子その他の飾り糸として用いられた。
執筆者:小笠原 小枝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ドイツの植物学者。シュトゥットガルトの富裕な官吏の子として生まれる。チュービンゲン大学で医学を学んだが、植物の顕微鏡的研究に興味を抱き、ベルン大学で生理学を講じたのち、1835年チュービンゲン大学の植物学教授となる。植物細胞が分裂によって増殖することを明らかにした(1835)。また植物細胞の細胞壁の内側に粘性物質があることをみいだし、プロトプラズマProtoplasma(原形質)とよんだ(1846)。この語は、1839年にプルキンエがつくったものであるが、モール以後広く用いられるようになった。生涯独身で、死ぬまで教授職にあった。没後、その講座はホフマイスターに引き継がれた。長兄は公法学者、次兄はオリエント学者として知られている。
[檜木田辰彦]
(1)moor(オランダ語)
細い針金を芯(しん)に、着色した繊維と別の針金を撚(よ)り合わせ、ビロード状の毛羽を立てたもの。工作、手芸装飾などに用いる。また、モール細工のアクセサリーなども市販されている。さらに、歯科医学の分野でも、モールでつくられた歯間部用歯ブラシがアメリカから輸入されており、歯科医や患者の間で好まれて使われている。
(2)mogol(ポルトガル語)
モール織のことで、絹の紋織物の一種。経(たて)は絹糸で、緯(よこ)に金糸を用いたものを金モール、緯に銀糸を用いたものを銀モールとよぶ。モールとは毛虫の意味で、16世紀インドのムガル帝国で産した緞子(どんす)に似ている。繻珍織(しゅちんおり)、絵緯(えぬき)リボン状織物も、総括してモール織とよぶ。
[市川久美子]
ドイツの応用力学者。ホルシュタインのウェッセルブーレンで生まれる。ドイツ国営鉄道の建築技師を経て、シュトゥットガルト、ドレスデンの各工科大学教授を歴任、19世紀以来の静力学を体系化、整理し、図式解法に発展させた。なかでもトラスの図解力学およびクラペイロンの方程式(3連モーメント法)に著しい業績をあげ、梁(はり)の曲げに関するモールの定理、座屈理論におけるモールの応力円を創出した。ドイツにおける最初の名誉工学博士の一人。ドレスデンで没した。
[村松貞次郎・藤原恵洋]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報
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