改訂新版 世界大百科事典 「クサガメ」の意味・わかりやすい解説
クサガメ (臭亀)
Reeves' turtle
Chinemys reevesii
日本では公園の池などでもっともふつうに見られるヌマガメ科バタグールガメ亜科Batagurinaeの淡水性カメ。本州,四国,九州,壱岐,対馬のほか,朝鮮半島,中国東部,台湾に分布。甲長10~25cm,雌は雄よりも大きくなる。池や川にすみ,公園や社寺の池ではニホンイシガメと混生しているが,次の点で区別できる。すなわち本種は頭頂の後半部が細鱗に覆われ,背甲の周縁が滑らかでギザギザ状でなく,頭頸部に鮮やかな黄色の斑紋があり,各甲板は黄色で縁取られている。イシガメほど神経質でなく,甲羅干しの日光浴をするのがよく見られる。雑食性で,餌は魚,水生昆虫,甲殻類,水草など。飼育下ではレバー,煮干し,コマツナなども食べる。6~7月ごろ,雌は後肢で水辺の土に穴を掘り,1回に3~12個ほどを産卵する。卵は長径4cmほどの白色楕円形で,そのまま越冬し翌春に孵化(ふか)するが,一部は秋にかえる。飼育下では2~3ヵ月で孵化。腋下腺や鼠径(そけい)腺から自衛用の一種の悪臭を放つのが名の由来。近年では本種の子ガメもゼニガメと称してペットとされ,また大陸産をキンセンガメと名付けて売っている。
執筆者:松井 孝爾
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報