能の曲名。四番目物。非現行演目。作者不明。シテは鎌倉の男。遠江の見付(みつけ)では祇園会の当日泊まり合わせた旅人に,東西の舞車の上で舞を舞わせる習慣だった。祭りを明日に控えて舞の係り(ワキ)が待ち受けていると,鎌倉の男(シテ)が来かかるので舞を所望する。男は,都から連れ帰った女が留守中に父親から追い出されたので,探し求めて都に上る道中だった。翌日になり,西の舞車では旅の女性(ツレ)が《美人揃の曲舞(びじんぞろえのくせまい)》を舞う。在原業平が契った12人の美人を列挙した曲舞である。ついで鎌倉の男が東の舞車で《妻戸の曲舞》を舞う。これは菅原道真の霊が,願いを聞いてくれない師の法性坊(ほつしようぼう)に怒り,柘榴(ざくろ)をかんで妻戸に吹きかけたところ,火となって燃え上がったという物語である。2人の舞は評判がよく,さらに大磯の遊女虎と曾我十郎の別離を相舞(あいまい)に舞うことになる。舞の途中で男は相手が探し求めた女と知って言葉をかけるが,女に制されて無事舞い納める。二つの曲舞だけは独立した闌曲(らんぎよく)として現行する。
執筆者:横道 万里雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…2座または2者が別々の曲を出して競う場合と,同一曲を相舞(あいまい)で競う場合があった。古くから行われており,廃曲の能《舞車(まいぐるま)》は,東西に二つの舞車(祭礼の山車(だし))を仕立て,その上で別曲を演じるという趣向である。世阿弥の《風姿花伝(ふうしかでん)》には,猿楽の〈勝負の立合の手立て〉が,《申楽談儀(さるがくだんぎ)》には立合の心得などが述べられている。…
…闌曲は独吟(どくぎん)が原則だが,観世流小鼓には,闌曲の譜としてシテ方観世流の相手をする一調(いつちよう)の譜があるという。現行の闌曲は62曲で,17曲は現在も能として上演されている曲の一節(《花筐(はながたみ)》など)であり,45曲は《松浦物狂》や《横山》《舞車》のように,能としては上演されなくなった曲か,《東国下》や《西国下》のように最初から謡い物として作られた曲である。いずれも,最高の芸位と技巧を必要とする謡い物である。…
※「舞車」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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