舞車(読み)まいぐるま

精選版 日本国語大辞典 「舞車」の意味・読み・例文・類語

まい‐ぐるま まひ‥【舞車】

[1] 〘名〙
① 祭の時に引く山車(だし)
※花営三代記‐応永二八年(1421)六月七日「有祇園会、舞車御所へ参る」
※雑俳・住吉おどり(1696)「かしてたも・子が子にもたす舞車」
[2] 謡曲番外曲作者不詳。遠江(とおとうみ)見付では、祇園祭前夜、ここの宿に泊まった旅人二人に東西二つの舞車の上で舞を舞わせる習慣がある。たまたま、生き別れた妻を捜しに都へ上る鎌倉亀ケ江ケ谷(やつ)の男と、その男を捜しつづける都の妻がこれに選ばれ、舞車の上で合舞を舞うことになって、二人は再会する。美人揃。

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デジタル大辞泉 「舞車」の意味・読み・例文・類語

まい‐ぐるま〔まひ‐〕【舞車】

祭礼のときに出す山車だし

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改訂新版 世界大百科事典 「舞車」の意味・わかりやすい解説

舞車 (まいぐるま)

能の曲名四番目物。非現行演目。作者不明。シテは鎌倉の男。遠江の見付(みつけ)では祇園会の当日泊まり合わせた旅人に,東西の舞車の上で舞を舞わせる習慣だった。祭りを明日に控えて舞の係り(ワキ)が待ち受けていると,鎌倉の男(シテ)が来かかるので舞を所望する。男は,都から連れ帰った女が留守中に父親から追い出されたので,探し求めて都に上る道中だった。翌日になり,西の舞車では旅の女性(ツレ)が《美人揃の曲舞(びじんぞろえのくせまい)》を舞う。在原業平が契った12人の美人を列挙した曲舞である。ついで鎌倉の男が東の舞車で《妻戸の曲舞》を舞う。これは菅原道真の霊が,願いを聞いてくれない師の法性坊(ほつしようぼう)に怒り,柘榴(ざくろ)をかんで妻戸に吹きかけたところ,火となって燃え上がったという物語である。2人の舞は評判がよく,さらに大磯の遊女虎と曾我十郎別離を相舞(あいまい)に舞うことになる。舞の途中で男は相手が探し求めた女と知って言葉をかけるが,女に制されて無事舞い納める。二つの曲舞だけは独立した闌曲(らんぎよく)として現行する。
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世界大百科事典(旧版)内の舞車の言及

【立合】より

…2座または2者が別々の曲を出して競う場合と,同一曲を相舞(あいまい)で競う場合があった。古くから行われており,廃曲の能《舞車(まいぐるま)》は,東西に二つの舞車(祭礼の山車(だし))を仕立て,その上で別曲を演じるという趣向である。世阿弥の《風姿花伝(ふうしかでん)》には,猿楽の〈勝負の立合の手立て〉が,《申楽談儀(さるがくだんぎ)》には立合の心得などが述べられている。…

【闌曲】より

…闌曲は独吟(どくぎん)が原則だが,観世流小鼓には,闌曲の譜としてシテ方観世流の相手をする一調(いつちよう)の譜があるという。現行の闌曲は62曲で,17曲は現在も能として上演されている曲の一節(《花筐(はながたみ)》など)であり,45曲は《松浦物狂》や《横山》《舞車》のように,能としては上演されなくなった曲か,《東国下》や《西国下》のように最初から謡い物として作られた曲である。いずれも,最高の芸位と技巧を必要とする謡い物である。…

※「舞車」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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