四番目物(読み)よばんめもの

精選版 日本国語大辞典 「四番目物」の意味・読み・例文・類語

よばんめ‐もの【四番目物】

〘名〙 能の五番立て上演で、四番めに演じられることを原則とする能。主人公(シテ)狂女武士・怨霊など広範囲で、曲の性格多種に及ぶ。脇能修羅物鬘物切能には分類しがたい能の類をいう。よんばんめもの。

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デジタル大辞泉 「四番目物」の意味・読み・例文・類語

よばんめ‐もの【四番目物】

能の分類で、正式な五番立ての演能の際に、四番目に上演される曲。脇能物修羅物鬘物かずらもの切能物きりのうもの以外のすべての曲を広く含む。雑能物ざつのうもの

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百科事典マイペディア 「四番目物」の意味・わかりやすい解説

四番目物【よばんめもの】

能の曲柄。雑能とも。五番立ての正式番組による催能の場合,四番目に演ぜられる能で,初・二・三・五番目以外の能。現行92番。鬘(かつら)物に近い準鬘物の《西行桜》《小塩》,脇能物に似た準脇能物の《雨月》《三輪》,女物狂い,男物狂いの狂乱物,遊狂物の《自然(じねん)居士》,異邦的な遊楽物の《邯鄲(かんたん)》,この世に妄執(もうしゅう)を残す執心物の《通(かよい)小町》《善知鳥(うとう)》,復讐あの世から現れる怨霊(おんりょう)物の《藤戸》《道成寺》,劇的な人情物の《俊寛》《鳥追舟》,現実の男をシテとする現在物の《安宅(あたか)》《小袖曾我》など。いずれもよく上演される。
→関連項目葵上蘆刈綾鼓景清砧(能)小督隅田川蝉丸卒都婆小町鉢木

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改訂新版 世界大百科事典 「四番目物」の意味・わかりやすい解説

四番目物 (よばんめもの)

能の分類名。江戸時代,五番立て(一日の番組編成基準に基づく分類法)を正式とした能番組で,四番めに据えられる能。江戸期の型付には,〈雑類〉〈雑物〉〈雑の能〉等と分類されている。現行曲は各流とも約90曲。曲種によって《高野物狂》《蘆刈》《土車》等の男物狂と《百万》《桜川》《三井寺》等の女物狂を総括して〈狂乱物〉,《船橋》《通小町》《阿漕(あこぎ)》等の〈執心物〉,《三笑(さんしよう)》《邯鄲(かんたん)》《天鼓(てんこ)》などの〈遊楽物〉,《鉢木》《盛久》《安宅》等の〈現在物〉などに分類するが,《錦木》《松虫》《梅枝(うめがえ)》等を〈執心遊楽物〉,《摂待(せつたい)》《景清》《鳥追舟》等を〈人情物〉とすることもある。またシテの役柄・使用面から《自然居士(じねんこじ)》《花月》《東岸居士(とうがんこじ)》を〈喝食物(かつしきもの)〉,働事(はたらきごと)から《葵上》《道成寺》《黒塚》(観世流では《安達原》)を〈祈り物〉と分類することもある。要するに,さまざまの曲趣のものが混在している〈雑の能〉であり,中には略の二番めに用いられる曲もある。世阿弥のいうとおり,〈申楽(さるがく)とは神楽〉(《風姿花伝(ふうしかでん)》《申楽談儀》)であって,神を慰め,神の行為の代行をして,〈風月延年〉〈寿福増長〉(《風姿花伝》)をはかるものであろうが,そういう理念に支配される前は,いわゆる劇能が盛んに行われたのであり,その系譜に立つものがかなり〈四番目物〉に含まれていて,のちの歌舞伎劇への先駆ともなった。
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世界大百科事典(旧版)内の四番目物の言及

【能】より

…曲籍は,番組編成の指針であると同時に,演目の分類ともなっているし,また演出の大まかなめどともなる。すなわち,脇能物はよどみなくさわやかに,二番目物はきびきびと勇壮に,三番目物は優美にしっとりと,四番目物は変化を尽くして面白く,五番目物は手強く足取り速くというのがおよその演じかたである。むろん個々の演目で違いの幅は大きいが,一応の基準にはなるのである。…

※「四番目物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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