船舶再資源化香港条約(読み)せんぱくさいしげんかほんこんじょうやく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「船舶再資源化香港条約」の意味・わかりやすい解説

船舶再資源化香港条約
せんぱくさいしげんかほんこんじょうやく

船舶の解体作業に起因する人間の健康および安全ならびに環境に対する悪影響を防止するために、船舶の適正な再資源化について定めた条約。正式名称は、「2009年の船舶の安全かつ環境上適正な再資源化のための香港国際条約(Hong Kong International Convention for the Safe and Environmentally Sound Recycling of Ships, 2009)」であり、「シップリサイクル条約」ともよばれる。2009年5月11日に採択され、9月1日から国際海事機関IMO)本部において署名のため開放された。世界の商船船腹量40%を代表する諸国であって、それら諸国の直近10年における最大年間解体船腹量の合計が締約国全体の商船船腹量の3%以上となる15か国以上の批准等を得たときから24か月後に発効する。2021年6月時点の締約国は、インド、エストニア、オランダ、ガーナクロアチアコンゴ、スペイン、セルビアデンマーク、ドイツ、トルコ、日本、ノルウェーパナマ、フランス、ベルギーマルタの17か国で、未発効。

 バーゼル条約および国際労働機関(ILO)と協力して作成されており、有害物質や労働に関する条件なども定められている。対象とされる500総トン以上の船舶においては、附属書に掲載されているアスベストポリ塩化ビフェニルPCB)などの有害物質の使用が禁止される。また、それらの物質とともに、鉛や水銀などの潜在的有害物質について、所在位置、種別、概算量などを明記した一覧表の作成と保持義務づけられる。その一覧表は、現存船の場合は、条約発効後5年以内に、またそれ以前にリサイクルされる場合はそれまでに、作成されなければならない。新造船の場合は造船所によって作成される。その後、変更に応じて追加一覧表、また、リサイクル直前には最終一覧表が作成されなければならない。

 他方、船舶リサイクル施設は、リサイクル承認された船舶以外を受け入れてはならない。また、作業者や周辺住民の健康および環境に対する悪影響の防止のための管理システムを確立しなければならない。リサイクル施設は、最終一覧表に基づいて船舶リサイクル計画書を作成し、リサイクル国の承認を得たうえで当該船舶に提供する。船舶は一覧表と船舶リサイクル計画書を旗国(船籍国)に提出し、最終検査を受ける。リサイクル施設には、事前通知と事後報告の義務が課せられる。

 日本国内では、2018年(平成30)4月25日の国会承認を経て2019年3月27日に加入書が寄託された。

[磯崎博司 2021年10月20日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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