船舶消防設備(読み)せんぱくしょうぼうせつび

日本大百科全書(ニッポニカ) 「船舶消防設備」の意味・わかりやすい解説

船舶消防設備
せんぱくしょうぼうせつび

船舶で火災に対処するために備えている火災探知・通報装置と消火装置の総称

岩井 聰]

探知・通報装置

船はその構造が複雑で人の監視が届きにくく、火災の発見が困難な場所が多いから、火災を遠くから探知し警報する装置が備えられている。これらの装置の設置条件については、船舶消防設備規則に規定されているが、火災発見者が警報ブザーを鳴らして通報する手動警報装置と、船倉など遠隔区域の火災の発生を自動的に探知し警報する火災探知装置に大別される。

 火災探知装置には、〔1〕火災の発生に伴う温度の上昇による金属の熱膨張または溶解を利用して警報器の電路を完成させて警報器を鳴らす電気サーモット式、〔2〕配置した空気管あるいは空気室内の空気の熱膨張を利用してダイヤフラムを膨張させ電路を完成させて警報器を作動させる空気管式、〔3〕各区画に配置した細管を通して火災による煙を吸気ポンプによって船橋に導き、その色や臭(にお)いを識別するか、オーディオディテクターを介して警報器を鳴らす煙管式、の3種類がある。

[岩井 聰]

消火装置

船は構造が複雑で積載貨物もさまざまであり、運航に必要な燃料や船用品も一律ではない。したがって火災の原因や様相も多様で消火の方法も同じにはなりにくい。そのため船が備える消火装置や消火用具もいろいろな種類、型式がある。これらは船舶消防設備規則に規定され、船の資格すなわち大きさや航行区域および船の種類などに応じて、備え付け数量や備え付け方法が定められている。(1)射水消火装置 消火ポンプを作動することによって船内に配置した送水管(消防主管)を介して送水し、これに取り付けた消火栓に消火ホースを連結して射水するもの。(2)固定式鎮火性ガス消火装置 炭酸ガスや不活性ガスを消火剤として使用する消火装置。これらの不燃性ガスを圧縮してボンベに収めて一室に固定設備しておき、ここから船倉や機関室に配置した送入管を使ってガスを送り消火する。(3)固定式蒸気消火装置 不燃性ガスのかわりに蒸気を送って消火する装置。蒸気ウィンチなどの甲板機械に送る蒸気管から枝管で火災区画に蒸気を送って消火する。(4)固定式泡消火装置 不燃ガスを含む泡状の混合溶液をつくって火災表面に放出拡散し、酸素の供給を絶って消火する形式のもの。混合液をつくる各元液を甲板上のタンクに区分して格納、管によって火災区画に送り混合液をつくる。(5)固定式加圧水噴霧装置 加圧した圧力水槽とポンプによって所要の区画散水口から噴霧状の水液を散布する形式のもの。旅客船の居住区域や危険物積載倉庫などに用いられる。(6)消火器 持ち運び式のもので、液体消火器、泡消火器粉末消火器および消防手桶(ておけ)などが用いられる。(7)その他 消防員の装具として呼吸具、命綱、安全灯など。また、可燃性ガス検定器、持ち運び式電気ドリル、斧(おの)などがある。

[岩井 聰]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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