甲板機械(読み)こうはんきかい(その他表記)deck machinery

改訂新版 世界大百科事典 「甲板機械」の意味・わかりやすい解説

甲板機械 (こうはんきかい)
deck machinery

船の推進以外の目的に使われる補助機械で,機関室に置かれていないものの総称。主要なものは操舵装置舵取装置),荷役装置,揚錨(ようびよう)装置,係船装置などである。

(1)舵取装置 船は船型と速力大小に応じて適当な舵取装置を装備しているが,その機能は船の安全上きわめて重要であり,長さが60mを超える船には動力による舵取装置をつけることが法規で義務づけられている。舵取装置は舵取機とその付属装置および操縦装置からなる。舵取機は舵を動かすのに必要な動力を発生する部分で,現在の大型船ではほとんど電動油圧式が用いられている。この方式は電動機で油圧ポンプを動かして油圧を発生させるとともに,油の流量を制御することによって操舵速度を変化させるもので,油圧は油圧シリンダーによってラダーチラー,ラダーストックなどの機構を介して舵に伝えられる。また,舵の動きは追従装置によって指令された舵角に保持されるようになっている。なお,舵取機の容量は片玄いっぱい(35度)から反対玄いっぱい(35度)を30秒以内に転舵できるように定められている。操縦装置は船橋に設けられた操舵輪(単に舵輪とも)の操作によって,舵取機の回転方向と回転速度を制御する装置である。操舵輪による指令は以前は管内の圧力伝達によって舵取機に伝えられる方式が多かったが,最近の船はほとんど電気信号によっており,また,自動操舵装置を併せて備えている。

(2)荷役装置 鉱石運搬船やばら積船,コンテナー船などの専用船を除き,一般貨物船では貨物の積卸し,移動などの目的で荷役装置が設けられる。荷役装置には大別するとデリック装置式と甲板クレーン式がある。前者は直立したデリックポスト支柱)と,その最下端に斜めに取り付けられ,索と滑車によって伏仰および回転できるようになっているデリックブーム(棒)の組合せで構成され,ブーム先端から下ろした荷役索(他端はウィンチドラムに取り付けられる)によって荷役を行う。ハッチの前後または後部に両玄各2組(1ガングgangという)を配置するのがふつうである。甲板クレーンは操縦室,腕からなる旋回式のジブクレーンで,荷役能率がよいため,最近ではデリック装置に代わって広く用いられるようになっている。

(3)揚錨装置 ,錨に取り付けられる錨鎖,錨を引き揚げるために錨鎖を巻き取るウィンドラスなどからなる。

(4)係船装置 船をブイ岸壁埠頭ふとう),桟橋などへ係留する際に用いられる装置で,チェーンケーブル,索,ワイヤロープなどの巻込み,巻出しを行う係船ウィンチ,固縛のためのボラードなどからなる。係船装置は船の大小や種類によって差異があるが,大型船では船首,船尾,中部の甲板に取り付けられる。また係留時の喫水変化,風浪,潮流などによる係船索にかかる張力の変化に応じて自動的に巻込み,巻出しを行って張力が一定になるようにした自動係船ウィンチもある。

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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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