色覚異常と社会的生活

六訂版 家庭医学大全科 「色覚異常と社会的生活」の解説

色覚異常と社会的生活
(眼の病気)

 正常色覚をもたない人は「色盲(しきもう)」と表現され、社会的には進学や雇用上の制約から差別の原因のひとつになっていました。近年人権に対する意識の向上によって社会的制約が次々撤廃されつつあり、その流れのなかで「色盲」という表現が使われず、代わりに「色覚異常」という表現が使われだしています。ただ、どのような呼び方が適切かは、今後も議論されるべき問題です。

 色覚遺伝子変異のある人が社会生活上、実際に困る場面に遭遇することはあまりありません。色覚異常があっても信号の色もわかれば、絵も描けますし、衣装の色合わせもできます。

 しかし、ある種の色相(しきそう)差異が、さまざまな環境の明度彩度(さいど)のなかで判別しにくくなる時があります。これは、変異のない人に色の基準を合わせているからです。

 加齢や障害によって身体にハンディのある人が日常生活を送りやすいように、生活空間では敷居段差をなくすバリアフリーという考えが浸透してきています。そこで、色覚遺伝子に変異があってもなくても、色の判別が共有できるようにしようという試みが「色覚バリアフリー」と表現され、普及しつつあります。

 日常の色表現が多彩になった今日、いろいろな色覚をもった人が垣根なくコミュニケーションできる成熟した社会が望ましいと思われます。その一環として、色覚異常を広く認識させてきた学校健診での色覚検査が2003年度から撤廃され、色覚異常を考慮した教育環境の準備が始まっています。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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