若穂地区(読み)わかほちく

日本歴史地名大系 「若穂地区」の解説

若穂地区
わかほちく

長野市東南部、千曲川右岸に位置する。東は小県ちいさがた真田さなだ菅平西すがだいらにし組北端から北方へ、熊窪くまくぼ山・妙徳みようとく山の山稜、やや西折して大洞おおぼら山・十九つつはなまでの稜線で須坂すざか市と境、北は耕地須坂井上いのうえ福島ふくじま境。西は千曲川で限られる。南西は長野市松代まつしろ町の寺尾てらお東条ひがしじよう豊栄とよさかと、千曲川端の関崎せきざきから大星おおぼし山・奇妙きみよう山・保基谷ほきや岳の稜線境。南は保基谷岳の分水で小県郡真田町と境。

妙徳山から西方へ太郎たろう山・葛巻かつらまき山・じようみねの支脈が張り出している。保基谷岳北面の水は保科ほしな川となり、北西に流れ扇状地を造り、平地部では北流して千曲川に入る。この左側に平行して堀切山の水が赤野田あかんた川となり平地部で保科川へ合す。千曲川は沿岸に自然堤防を形成、東部山脚との間は湿地帯をなし、良好な水田地帯となり、一部には条里的遺構をとどめている。山麓線の標高は三三〇メートル前後。

旧石器時代の遺跡としては、高岡たかおか(旧保科村)の有舌尖頭器一本が出土するのみで、縄文時代の土器も後期・晩期が、わずかに保科川扇状地に認められる。弥生時代の土器は山麓線や自然堤防周辺に発見されるが、前期のものはなく、中期もわずかで多くは後期である。なお大型蛤及び石斧は山間部にもまま発見されている。古墳は保科川扇状地上や、周辺山脚等に密集して約七〇基ほどある。旧高井郡内で大室おおむろ(現長野市松代町)に次ぐ基数である。大星山北々西支脈上の全長約五〇メートルの前方後円墳を除くと、他は古墳時代後期の小古墳が多い。型式は積石塚横穴式石室で、合掌式石室も二、三ある。なお消滅した保科長原の積石塚に屋形石郭の二子塚古墳がある。土師器等も土木工事で出土しているがわずかである。扇端に近い山麓上和田かみわだ(旧保科村)片山かたやま祭祀遺跡が知られている。最近には素環頭太刀が出土している。

天応元年(七八一)に、高井郡の墨坂神・越智神に封戸各一戸をあてられている(新抄格勅符)。また保科には、坂上田村麻呂の伝えたという鉄鍬形を所蔵する清水せいすい寺がある。「和名抄」高井郡四郷の穂科郷は若穂地籍に該当する。古代末頃には外宮領の長田御厨ながたのみくりやが成立した。

養和元年(一一八一)六月の横田河原(現長野市篠ノ井しののい)合戦には、平軍に属した星名権八、木曾軍には井上光基(光盛)に属した星名党がある(参考源平盛衰記)

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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