リヒャルト・シュトラウスが1898年に作曲した管弦楽曲(作品40)。作曲者自身の指揮で、翌99年フランクフルト・アム・マインで初演。彼が書いた一連の交響詩の総決算ともいうべき作品で、題名の「英雄」とは彼自身にほかならない。音楽は単一楽章の形式をとり、二つの主要主題(英雄とその妻)を中心に、英雄の姿、彼を取り巻く人々、英雄の愛、敵対者との戦いと勝利、そして英雄の引退などを描写する。精妙な管弦楽法を用いてさまざまな対象を的確に描写する力量もさることながら、「英雄の業績」を紹介する部分でも明らかなように、個々の描写が断片のままに終わらず、大きな有機的統一体を形成しているところがみごとである。
[三宅幸夫]
…この頃より,指揮者として,同世代のマーラーおよびワインガルトナーと楽壇の帝王を競うようになる。またこの時期には,作曲家としても目ざましい活躍をして,《ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら》(1895),《ツァラトゥストラはこう語った》(1896),《ドン・キホーテ》(1897),《英雄の生涯》(1898)といった彼の創作を代表する交響詩の傑作群が書かれた。98年からベルリン宮廷歌劇場の第1指揮者に就任して,20年間その地位にありながら,ヨーロッパ各地,アメリカに演奏旅行。…
※「英雄の生涯」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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