目的語(読み)モクテキゴ

デジタル大辞泉 「目的語」の意味・読み・例文・類語

もくてき‐ご【目的語】

文の成分の一。他動性の動詞の表す動作をこうむる人や事物を表す語。現代語では、一般に格助詞」を伴う。西洋文法では、直接目的語・間接目的語などに区別することがある。学校文法では連用修飾語に含めて扱われる。客語

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精選版 日本国語大辞典 「目的語」の意味・読み・例文・類語

もくてき‐ご【目的語】

  1. 〘 名詞 〙 文の成分の一つ他動詞の表わす動作・作用が、必要条件として影響を及ぼす対象を表わす語。現代語では、多くの場合、助詞「を」を伴う。連用修飾語に含めて取り扱われる。西洋文法の用語では、直接目的語・間接目的語などに分類することもある。
    1. [初出の実例]「西洋文典にいふ他動詞とは其の動詞が目的語〈略〉を要し」(出典:日本文法論(1902‐08)〈山田孝雄〉一)

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改訂新版 世界大百科事典 「目的語」の意味・わかりやすい解説

目的語 (もくてきご)

の主要構成成分の一つで,動詞のあらわす働きをこうむる,あるいはその目標となる人や物を示す成分をいう。客語ともいわれる。このように意味的に定義される目的語は,形態的には言語によりさまざまの形をとって,文中のさまざまの位置にあらわれる。

 日本語の〈太郎花子リンゴをあげた。〉のような文において,〈あげる〉という行為の対象としてその働きを直接こうむる〈リンゴ〉と,その受け手である〈花子〉の二つが目的語となっているが,前者を直接目的語,後者を間接目的語とよぶ。なお,〈穴を掘る〉〈湯をわかす〉などにあっては,それぞれもとから〈穴〉や〈湯〉が存在していて,それがある種の動作の働きをこうむるというのではなく,〈掘る〉や〈わかす〉などの結果として〈穴〉や〈湯〉になるのであって,これらは〈結果の目的語〉といわれる。既にみたように,日本語では目的語は典型的には格助詞〈を〉を伴うが,〈道を歩く〉〈空を飛ぶ〉といった例は,〈道〉〈空〉は動作の行われる場所を示しているので,通常,目的語とはしない。一方〈ラーメンが食べたい。〉のように目的語が,〈が〉を伴ってあらわれる場合もある。

 名詞変化を行う言語では,直接目的語は対格で,間接目的語は与格であらわれることが多い。例えばEr hat ihr ein Buch geschenkt.〈彼は彼女に1冊の本をおくった。〉というドイツ語文では,間接目的語は与格(ドイツ文法のⅢ格)ihrで,直接目的語は対格(Ⅳ格)ein Buchであらわれている。

 格変化を行わない言語では,前置詞を用いたり,あるいは特別の標識となる語を使って目的語であることを示したりする。さらにはこれらのしるしもあらわれず,もっぱら語順によってそれが示される場合もある。例えば英語文John loves Mary.〈ジョンはメアリーが好きだ。〉ではMaryが目的語であることは,英語の特に強調などのない通常の文では,主語-動詞-目的語の順になることから知られる。

 このような主語(S),目的語(O),動詞(V)の配列関係を世界中の諸言語にわたってみてみると,SOV(日本語,ヒンディー語など),SVO(英語,スワヒリ語など),VSO(ウェールズ語,古典アラビア語など)の3タイプが9割以上を占めている。残りの三つのタイプのうちVOSはマラガシ語(マダガスカル語)などにみられる。Oが先頭にくるOVS言語,OSV言語については,やっと近年になって南米のカリブ諸語の中にみられることが明らかになった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「目的語」の意味・わかりやすい解説

目的語
もくてきご

統語上の機能に基づいて分類した文構成要素(名詞句)の一つ。文中の名詞句が目的語であるための条件は、言語によって異なる。英文法の伝統的分類では、文はまず「主語―述語」と分析される。述語にはいくつかの型があるが、その一つは「動詞―目的語」と分析される。英語では、目的語は動詞の直後に位置し、受動文の主語になりうるという点で、他の名詞句と区別される。たとえば、‘John killed Mary.’の‘Mary’は目的語である(‘Mary was killed by John.’といえる)が、‘John became a teacher.’の‘a teacher’は目的語ではない(‘A teacher was become by John.’とはいえない)。伝統文法ではまた、目的語を直接目的語と間接目的語とに分けることがある。間接目的語は直接目的語と異なり、前置詞句と交換でき、しばしば省略可能である(‘John bought 〔Mary〕 a watch.’=‘John bought a watch 〔for Mary〕.’)。なお、単に目的語という場合は、直接目的語をさすのが通例である。

 目的語が「動詞の示す動作・作用の影響を受けるものを示す語」と規定されることがあるが、これは個々の動詞の意味と関連して規定される名詞句の性質であって、統語上の概念である目的語の規定としては正しくない。それどころか、こうした意味的規定の当てはまらない例も少なくない(‘I know Mary.’ ‘We enjoyed the movie.’など)。目的語はまた、格語尾ないし前置詞(後置詞)による形態上の特徴に基づいて規定されることもあるが、これらの対応はかならずしも一対一ではない。たとえば、ドイツ語では、目的語と認められるものが対格で示されるが、対格が目的語を示さないこともある。日本語では、目的語を示す助詞「を」が「が」と交替することがある(「水を飲みたい=水が飲みたい」)。ただし、日本語で「を」のつく名詞句が統語上特別の役割を担う(語順、受動化の可否など)かどうかは疑問であって、日本語に目的語を認める必要はないという考えもある。

[山田 進]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「目的語」の意味・わかりやすい解説

目的語
もくてきご
object

文法用語。客語ともいう。文中にあって,意味のうえで動詞の表わす動作,作用の対象を示す単語や句。I love you.の youなど。目的語をとる動詞を他動詞という。 Give me liberty. (われに自由を与えよ) のような文では,me (われに) を間接目的語,liberty (自由を) を直接目的語という。による名詞の語形替変をもつ言語では格語尾で目的語を示すが,英語のようにそれがない言語では語順に頼ることが多い。なお前置詞が支配する名詞をその前置詞の目的語と呼ぶことがある。国文法では,格助詞の「を」がついた形を目的語と呼ぶ学者がある。

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百科事典マイペディア 「目的語」の意味・わかりやすい解説

目的語【もくてきご】

文の成分の一つ。一般に動詞の表す働きをうける名詞,代名詞,数詞,名詞句など。印欧語では,日本語の〈〜を〉にあたる直接目的語と〈〜に〉にあたる間接目的語のほか,前置詞が支配する名詞も目的語と呼ばれる。→他動詞
→関連項目日本語

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