改訂新版 世界大百科事典 「草原土壌」の意味・わかりやすい解説
草原土壌 (そうげんどじょう)
草原地帯に分布する土壌。世界の森林地帯の外側には気候条件が乾燥や低温,ときには水分過剰のために樹木が生育できず,イネ科植物を主体とする一年生または多年生の草本が広い範囲で生育し草原とよばれる植物群系を形成している。草原土壌の分布面積は広く,陸地面積の約25%にあたる3000万km2に達しているといわれている。世界の代表的な草原はユーラシア大陸内部の乾燥地に広がるステップで,北アメリカのプレーリー,アルゼンチンのパンパ,ハンガリーのプスタもこれに属するものである。これらの地域における草本植物の土壌への有機物供給量は年間1ha当り500kgから数tに及ぶとされ,ミミズなどの土壌小動物の活動も盛んで,土色は暗色を呈し,肥沃な土壌となっている。これらの肥沃な草原土壌は一般にチェルノーゼムとよばれているが,草原土壌はさらに乾燥した地域にまで広がっており,栗色土や砂漠ステップである褐色土の一部まで含まれている。しかし,このような草原土壌での農業は降水量が絶対的に不足しているところが多く,地下水の利用(オーストラリア),ダムや灌漑水路の建設(北アメリカ,中央アジア)により大規模な灌漑農業が行われている。日本には自然の植生としての草原ならびに草原土壌はほとんど存在しないが,阿蘇山,富士山,八ヶ岳など火山灰土壌地帯の山腹には二次植生としてのススキやシバなどの山地草原が小規模ながら存在する。
執筆者:松本 聰
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報