日本大百科全書(ニッポニカ) 「プスタ」の意味・わかりやすい解説
プスタ
ぷすた
puszta ハンガリー語
ハンガリー平原(オルフェルド)の東部にかつて広がっていた温帯性の長茎草原のこと。地域名称も兼ねる。ハンガリー平原には氷河時代に堆積(たいせき)した厚いレス(黄土)が分布しており、それは年間600ミリメートル程度の少ない降水量と相まって、そこに草原をつくりだした。また腐植層の厚い肥沃(ひよく)な土壌を生じさせた。しかし降水量に年ごとの増減が大きく、しばしば干魃(かんばつ)にみまわれたため、開発は遅れ、多くの部分が草原のまま長く放置されてきた。プスタというのはこうした草原につけられた名称で、もともとはハンガリー語で荒れ地を意味していた。しかし19世紀後半、この地方がトルコの支配を脱してから急速に耕地化が進み、現在ではほとんどが耕地である。小麦、トウモロコシ、根菜類、タバコ、ヒマワリなどが栽培されるほか、ウシやウマも多数飼育され、東ヨーロッパの穀倉地帯となっている。
[小泉武栄]