菊一文字(読み)キクイチモンジ

デジタル大辞泉 「菊一文字」の意味・読み・例文・類語

きく‐いちもんじ【菊一文字】

菊作りで、大輪の16弁に作った花。
鳥羽上皇備前則宗ら一文字系の番鍛冶ばんかじに命じて鍛えさせ、みずから焼き刃をしたという刀剣なかご菊花の紋が刻んであり、この名がある。御所焼菊作り。

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精選版 日本国語大辞典 「菊一文字」の意味・読み・例文・類語

きく‐いちもんじ【菊一文字】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 刀剣の菊作(きくさく)の一つ。備前則宗や貞次など一文字(銘に「一」の字を記したもの)系の刀工が鍛え、後鳥羽院がみずから菊の紋の焼きを入れたと伝えられる刀剣。
    1. [初出の実例]「重代の打物、備前菊一文字則宗」(出典:別所長治記(1580‐92頃))
  3. 大輪十六弁に作った菊。
    1. [初出の実例]「葉までよく咲みだれたる作りやう金目貫の菊一文字」(出典:狂歌・後撰夷曲集(1672)三)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「菊一文字」の意味・わかりやすい解説

菊一文字
きくいちもんじ

一般には後鳥羽院(ごとばいん)(院政1198~1221)作の刀剣を菊一文字と称している。この作は御所焼(ごしょやき)とも菊御作(きくのおんさく)ともよばれ、茎(なかご)に菊花紋を刻したものである。京鍛冶(かじ)・備前(びぜん)鍛冶・備中(びっちゅう)鍛冶を御所に召して鍛刀させ、自らも焼入れをしたと伝えられる。そのなかに作風が備前一文字派の作に似ているものがあって、菊一文字の呼称はそれに起因するものであろう。しかし実際にその茎に菊花紋と「一」の字を銘したものは江戸時代の刀工の作で、鎌倉時代の作には皆無である。備前国一文字派の作にも菊花紋の毛彫りをしたものがまれにあるが、これは菊一文字とはいわない。応永(おうえい)年間(1394~1428)の写本である観智院本(かんちいんぼん)『銘尽(めいづくし)』(国立国会図書館蔵)にも後鳥羽院番鍛冶(ばんかじ)の記事があり、また『承久記(じょうきゅうき)』にも、上皇自ら北面武士(ほくめんぶし)にその太刀を与えたことが記されている。

[小笠原信夫]

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