打物(読み)ウチモノ

デジタル大辞泉 「打物」の意味・読み・例文・類語

うち‐もの【打(ち)物】

雅楽で使う打楽器羯鼓かっこ三のつづみ太鼓鉦鼓しょうこなど。
刀剣薙刀なぎなたなどの、打ち合って戦うための武器
打ち鍛えたり、打って延ばしたりして作った金属器具。→鋳物
穀物の粉と砂糖をまぜ、型に入れて固めた菓子落雁らくがんなど。打ち菓子。
きぬたで打って柔らかくしたり、つやを出したりした絹織物などの布。
品物の交換。また、そのための品物。
「『いや、あれは人ので御ざりまする』『その儀ならば、―にいたそ』」〈狂言記・富士松〉
[類語](2片刃諸刃両刃替え刃やいば刃物凶刃/(4菓子和菓子洋菓子茶菓子銘菓名菓粗菓茶請けお茶請けスナック菓子餅菓子駄菓子生菓子半生菓子蒸し菓子焼き菓子打ち菓子干菓子ひがし

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「打物」の意味・読み・例文・類語

うち‐もの【打物】

  1. 〘 名詞 〙
  2. (きぬた)で布や絹織物を打ってつやを出すこと。また、そうしてつやを出した布や絹織物。
    1. [初出の実例]「これはうち物の所。ごたち五十人ばかり、めのこ共三十人ばかりあり」(出典:宇津保物語(970‐999頃)吹上上)
  3. ( 打ち鳴らすもの、の意から ) 小鼓、大鼓、鉦鼓(しょうこ)羯鼓(かっこ)などの打楽器の総称。また、それを打ち鳴らすこと。
    1. [初出の実例]「又北廊内為雅楽寮頭以下楽人召人等座。〈略〉承香殿西簾下立鼓処。打物皆在其間」(出典:新儀式(963頃)四)
  4. ( 打ち斬るもの、の意から ) 刀剣、薙刀(なぎなた)、槍などの武器の総称。転じて、一般に兵器武具の類をもいう。
    1. [初出の実例]「或は調度を負ひ、或は打物を取て、皆甲冑を着て」(出典:今昔物語集(1120頃か)二九)
  5. 剣術。
    1. [初出の実例]「早わざは、たうとかゐき得、うち物は、しばうが術をつたへ給ひ」(出典:浄瑠璃・初庚申楽遊(1679)一)
  6. 打ち鍛えて作った鉄、その他の金属器具の総称。⇔鋳物(いもの)。〔日葡辞書(1603‐04)〕
  7. ( 代償となる物品を打ち入れることの意から ) 品物を代えあうこと。物々交換。また、その品物。
    1. [初出の実例]「『そのぎならば、うちものにいたそ』『それはなにと御ざりませうぞ』『かへ物といへば同心でおりやるの』」(出典:狂言記・富士松(1660))
  8. 菓子の一種で、型に打ちこんで製したもの。落雁(らくがん)の類。打ち菓子。
    1. [初出の実例]「上方の打物と云ふたら矢張世界随一ぢゃ」(出典:落語・京阪見物(1894)〈三代目春風亭柳枝〉)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の打物の言及

【鍛金】より

…打物(うちもの),鎚起(ついき)ともいう。平らな鉄床の上に金属塊を置き,金鎚(かなづち)や木槌で薄い板金を作る鍛造,打ちのばして作った板金を表裏から打ち,絞り縮めなどして立体的な花瓶,鍋などを作る〈鎚起技法〉,金属板を折りまげたり,鑞(蠟)付(ろうづけ)したりして立体的なものを作る〈板金技法〉に大きく分けられ,これらの技法を併用している場合が多い。…

【落雁】より

…ただし,〈越の雪〉や〈山川〉は彫刻した木型を用いず,箱状の木枠に詰めて押し固めるので,現在は押物(おしもの)と呼んで落雁と区別している。また,木型に詰めて押し固めるものを打物(うちもの)と呼び,さらにその中の上級品を打物,他を落雁とする呼び方もある。打物の一種に和三盆(わさんぼん)と通称されるものがある。…

【和菓子】より

…(7)干菓子 熬種(いりだね)と焼種(やきだね)の2種類の材料が使われる。熬種はもち米,うるち米などの乾飯をいって粉にしたもので,落雁塩釜など打物(うちもの),押物(おしもの)と呼ばれるものや,おこし,五家宝(ごかぼう)などに使われる。五家宝はおこし種を砂糖と水あめでつくったみつでこねて丸い棒状に固め,きな粉をまぶしたものである。…

※「打物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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