菌状息肉症

内科学 第10版 「菌状息肉症」の解説

菌状息肉症(白血球系疾患)

定義
 菌状息肉症は表皮好性のある原発性皮膚T細胞腫瘍であり,脳回様の核を有する小型から中型の成熟Tリンパ球の浸潤で特徴づけられ,進行が緩徐な低悪性度皮膚リンパ腫である.
病因・疫学
 病因は不明であるが,高齢の白人・黒人男性に多く,日本人には比較的まれである.
病態
 脳回様の核を有する小型から中型で,通常CD3, CD4陽性,CD8陰性の成熟T細胞が表皮好性に増殖する.皮膚親和性のある正常T細胞と同じくケモカイン受容体のCCR4なども陽性となることが多い.通常病勢はきわめて緩徐に進行し,皮疹の性状の悪化と内臓病変へのリンパ腫細胞の浸潤により,紅斑期から扁平浸潤期,腫瘤期,内臓浸潤期へと移行する.
臨床症状
 各病期により上記の特徴的な皮疹を呈し,瘙痒感落屑を伴うことが多い.
検査成績・診断
 病理学的に表皮好性のある脳回様の核を有する小型から中型のTリンパ球の浸潤があり,免疫染色でリンパ腫細胞が上記の表面形質を有することで診断する.細胞・組織形態と表面形質のみではATLとの鑑別は困難であり,ウイルス学的なHTLV-1検査が必須である.また病初期で浸潤が軽微な場合,非特異的な皮膚炎との鑑別が困難である.
予後
 紅斑期で診断された場合は,その80%以上が20年腫瘍死しない.一方,内臓腫瘤期で診断された場合は,生存期間中央値は約1年である.皮膚(T),リンパ節(N),内臓(M),末梢血(B)病変の有無と程度によるTNMB病期分類は,よりよく予後を予測する.
治療・予防
 病初期は経過観察または局所療法が,進展期には全身療法が主体となるが,いずれも病状を改善させても完治はできない.このため,比較的若年者の場合は,同種造血幹細胞移植が検討される.局所療法としては,ステロイド外用,抗癌薬外用,紫外線,放射線が,全身療法としてはビタミンA,抗癌薬などが日本では用いられている.発症要因が不明なため,予防法は確立していない.Sèzary症候群(Sèzary syndrome:SS) Sèzary症候群は,MF亜型とされ,紅皮症,全身リンパ節腫脹と白血化を3徴とする同じ細胞由来の予後不良な疾患である.悪性度は皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)の中でも高く,進行期のMFと同様にインターフェロン,抗癌薬などで治療されるが,5年生存率は約20%と不良である.[塚崎邦弘]
■文献
Ralfkiaer E, Cerroni L, et al: Mycosis fungoides. In: WHO Classification of Tumour of Haemaopoietic and Lymphoid Tissues, 4th ed (Swerdlow SH, Campo E, et al eds), pp 281-284, IARC Press, Lyon, 2008.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「菌状息肉症」の意味・わかりやすい解説

菌状息肉症
きんじょうそくにくしょう
mycosis fungoides

慢性の経過をたどって死にいたる疾患で,T細胞性悪性リンパ腫の一つ。経過や症状により3~4期に分けられる。 (1) 前息肉症期 境界鮮明な慢性湿疹に似た局面性類乾癬様病変で始り,これが軽快,再発を繰返しつつ,やがて固定化する。数ヵ月より数年に及ぶ。 (2) 扁平浸潤期 上記病変が次第に浸潤し,硬く扁平に隆起,拡大する。ときに中央部が消失し,環状を呈する。 (3) 腫瘍期 初発から数年~十数年を経て扁平浸潤性局面に腫瘍形成をみる。腫瘍は球状に隆起し,独特の息肉状を呈する。やがて中央より潰瘍化し,悪液質に陥る (第4期悪液質期) 。ときに肝臓脾臓も腫脹し,数年以内に死亡する。本症の異型に電撃型と紅皮症型がある。前者は第1,2期が短い,あるいはこれらを経ずして腫瘍形成をみるもの,また後者は紅皮症として発症し,のちに特有の腫瘍形成をみる型である。

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