菌類分布(読み)きんるいぶんぷ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「菌類分布」の意味・わかりやすい解説

菌類分布
きんるいぶんぷ

菌類の地理的な分布をいう。菌類は地球上のほとんど至る所で生活しているが、種属の地理的分布は部分的にしか知られていない。

[寺川博典]

水生菌

海中には有機物の分布に伴って腐生菌が広く分布し、細菌類、放線菌類、酵母菌仲間などには普遍種がみられる。4000メートル以上の深さにまでツボカビ類や不完全菌仲間の存在が知られ、卵菌(らんきん)類のフクロカビモドキは北極圏から温帯にかけて普通にみられるといわれる。淡水中には原核菌類のほかにツボカビ類、卵菌類、不完全菌仲間が普遍的であるが、カワリミズカビ熱帯亜熱帯に多く、サヤミドロモドキは温帯の冷水中に多い。都市廃水中の細菌類、ケカビフシミズカビ、不完全菌仲間は廃水菌といわれる。

[寺川博典]

土壌菌

とくに多いのは、土の深さが20センチメートルまでの所で、普遍種が多い。泥炭表層土の1グラム中の細菌数は7億、深さ35~50センチメートルで1億(真核菌数は50万~100万)といわれる。多雨の高所には変形菌類接合菌類が多く、砂漠にも、ある種の放線菌類、担子菌類、不完全菌仲間がみられる。亜熱帯の土壌にはコウジカビ仲間が多く、アオカビ仲間は温帯に普通にみられる。

[寺川博典]

岩層菌

脱窒(だっちつ)菌やセルロース菌は、地下水にわずかに存在する有機物を利用、あるいは石油組成を嫌気的に同化する。石油鉱床やその層内水には石油分解菌やメタン菌がみられ、堆積岩を通して拡散する天然ガスは、一部の細菌類や放線菌類によって酸化される。

 以上のほか、限られた種類の宿主に依存する菌類の分布は、宿主の分布に従う。ヌメリイグチやコガネタケは北半球、オウギタケやアミタケはヨーロッパからアジア、タマウラベニタケやキイロイグチは北アメリカから東アジア、ツキヨタケやアカヤマドリは極東、カブラテングタケは東南アジア、アミヒカリタケは熱帯・亜熱帯に分布する。

[寺川博典]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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