日本大百科全書(ニッポニカ) 「卵菌類」の意味・わかりやすい解説
卵菌類
らんきんるい
[学] Oomycota
生殖細胞(遊走子)の前端か側面に、羽型と尾型の鞭毛(べんもう)各1本をもつ二鞭毛の菌類。有性生殖では造精器が生卵器に接触し、受精管を卵細胞まで伸ばして接合するが、接合子は厚壁を生じ、休眠する卵胞子となる。この種の菌は水中と陸上にすみ、腐生も寄生もみられる。
細胞内寄生の単細胞性、ないし簡単な菌糸では、その栄養体全体が遊走子嚢(のう)または生卵器・造精器になる(全実性という)。その他の多くのものは、多核を含む管状の菌糸が分岐した菌糸体であり、生殖時には菌糸の先端部が隔壁で仕切られて遊走子嚢その他になる(分実性という)。陸上被子植物類寄生菌では、細胞間に侵入した菌糸体が宿主細胞内にこぶ状か分岐した吸器をつくって栄養を吸収し、気孔から突き出して柄(え)のある胞子嚢を形成する。これは分生胞子嚢といわれ、柄から離れて気流や雨水によって散布され、発芽時に水があれば遊走子を生ずるが、水がない場合は発芽管を生じて菌糸体に成長する。
[寺川博典]
分類
(1)クサリフクロカビ目 全実性菌糸がアオミドロやカニの卵などに寄生し、連鎖状の数個の遊走子嚢や、造精器と一卵をもつ生卵器になる。
(2)ミズカビ目 珪藻(けいそう)類などに寄生する単細胞体や、ヤブレツボカビのように微小な体に仮根を生ずるものもあるが、多くは腐生する管状菌糸体である。
(3)フシミズカビ目 淡水中で腐生し、菌糸にはほぼ等間隔でくびれがあり、菌糸体の基部には仮根がある。生卵器は普通一卵を含んでいる。
(4)フハイカビ目 水陸両生から陸生まであり、多くは地中で腐生する。少数は藻類、昆虫に寄生し、ツリイトカビはワムシをとらえる。エキビョウキンは農作物寄生で、分生胞子嚢を生ずる。
(5)ツユカビ目 農作物、ブドウなどに寄生し、分生胞子嚢を生ずる。生卵器には一卵があり、卵胞子が発芽すると発芽管の先に遊走子嚢ができる。
[寺川博典]