日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツキヨタケ」の意味・わかりやすい解説
ツキヨタケ
つきよたけ / 月夜茸
[学] Lampteromyces japonicus (Kawamura) Singer
担子菌類、マツタケ目キシメジ科の毒キノコ。毒性とひだの発光性で名高い。傘は半円形で横に短い茎をつけ、幅10~25センチメートル、表面は初め黄茶色で、細かいささくれを帯びるが、のち紫褐色となり、ろう質のつやをもつ。肉は厚く白色で、無味無臭。茎は太さ、長さとも1~3センチメートルで、ひだとの境には発達不十分なつばが低い畝(うね)状の隆起帯となって取り巻く。茎を縦断すると肉に青黒い斑紋(はんもん)があるが、これは類似するキノコとツキヨタケを識別する際の決定的な特徴である。ひだは初め淡橙黄(とうこう)色で、成熟すると白くなり、幅広で茎に垂生する。ひだには独特の発光性があり、暗室では青白く光ってみえる。分布は、日本のほか、韓国から沿海州地方にかける。本州ではブナの枯れ木に生えるが、ブナの北限以北ではイタヤカエデに多い。ツキヨタケは日本の代表的毒菌で古くから知られ、クマベラ、ブナナバ、ヒカリゴケ、オメキなどの古名、地方名があり、『今昔物語集』にはワタリ(和太利)の名で、中毒事件に登場する。
[今関六也]
毒成分
ツキヨタケによる中毒は、日本のキノコ中毒のなかでももっとも多い(年によっては200人以上の患者が出る)。症状は激しい嘔吐(おうと)、下痢、腹痛で苦しむが、ほとんどは一両日で治る。毒成分は1963年(昭和38)に日本で研究され、ランプテロールと名づけられた。しかし、ランプテロールは、これよりすこし早くアメリカで研究されたイルージンと同一物であることがわかり、異名として扱われることとなった。イルージンは欧米産の毒菌の成分であるほか、発光菌として知られるオンファローツス・オレアリウスOmphalotus olearius (Fr.) Sing.、アメリカのクリトシイベ・イルーデンスClitocybe illudens (Schw.) Sacc.の毒成分でもある。
[今関六也]