日本大百科全書(ニッポニカ) 「落語の「落ち」の種類」の意味・わかりやすい解説
落語の「落ち」の種類
らくごのおちのしゅるい
「落ち」(サゲ)は落語の生命ともいうべき重要なものである。これにはいくつもの型があり、なかには一つの落語で2種、3種を兼ねている場合もあるので分類はむずかしい。もともと分類を考えてつくられたものではなく、長い歴史のなかで幾多の落語家が創意工夫を凝らしてつくったものである。ただ、落語鑑賞のうえではいちおう分類してみるのも楽しいので、あえてここに種類を示してみよう。
なお、この「落ちの種類」は、1943年(昭和18)刊行の渡辺均(ひとし)著『落語の研究』(大阪・駸々堂書店)で巧みに分類が試みられ、それからとくに人々の関心が寄せられるようになったものである。
考え落ち
よく考えないとわからない落ち。『そば清(せい)』『蛇含草(じゃがんそう)』『疝気(せんき)の虫』など。
逆さ落ち
落ちになる内容を、そのまま先に言ってしまっておく。『死ぬなら今』が好例。
しぐさ落ち
ことばに出さず、しぐさで見せる落ち。『死神』『こんにゃく問答』『猫久(ねこきゅう)』『首提灯(くびぢょうちん)』。
地口落ち
大阪では「仁輪加(にわか)落ち」という。落ちが駄洒落(だじゃれ)になっているもの。落語の落ちのなかではもっとも多い。『富久(とみきゅう)』『大工調べ』『鰍沢(かじかざわ)』『甲府(こうふ)い』『大山詣(おおやままい)り』『錦(にしき)の袈裟(けさ)』『天災』『たがや』など。
仕込み落ち
あらかじめ落ちの説明をまくら(導入部)あるいは筋のなかで入れておかないとよくわからないもの。『明烏(あけがらす)』『鉄拐(てっかい)』『今戸(いまど)の狐(きつね)』『真田小僧(さなだこぞう)』など。
とたん落ち
最後に落ちるとたんに、その落ちのひとことで咄(はなし)全体の筋がうまく決まる最上のものである。『百年目』『寝床』『愛宕山(あたごやま)』『笠碁(かさご)』『後家殺し』など名作が多い。
とんとん落ち
「拍子落ち」ともいう。とんとんと調子よく進んで、チョンと拍子の呼吸で落ちになるもの。『山号寺号(さんごうじごう)』『しの字嫌い』『のめる』など。
ぶっつけ落ち
互いに言っていることが通じないで、別の意味にとって、それが落ちになる。『らくだ』『反魂香(はんごんこう)』『宿屋の仇討(あだうち)』『あくび指南』『たちきり』『抜け雀(すずめ)』など。
まぬけ落ち
ばかばかしいまぬけたことで結末を迎える落ち。『粗忽(そこつ)長屋』『穴(あな)どろ』『風呂敷(ふろしき)』『夏の医者』など優れた落語に多い。
回り落ち
巡り巡って元のところへ戻ってくるという落ち。
見立て落ち
見立て違いの、とんでもないところからくる滑稽(こっけい)で落とす。意表外のものに見立てたものが落ちになる。『首提灯(くびぢょうちん)』など。