風呂敷(読み)フロシキ

デジタル大辞泉 「風呂敷」の意味・読み・例文・類語

ふろ‐しき【風呂敷】

物を包むのに用いる正方形の布。「風呂敷包み」
入浴のとき、衣類を脱いで包んだり、衣類を着る際に床に敷いたりした布。古くは正倉院に残っているものもあり、中世には衣包・平包の名がみられる。江戸前期あたり、銭湯風呂の発達に伴って、風呂敷の名が一般的になったという。
[類語]袱紗

ふる‐しき【風呂敷】

ふろしき」の音変化。
「―をかぶった明日蚊帳かやを出し」〈柳多留・二一〉

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精選版 日本国語大辞典 「風呂敷」の意味・読み・例文・類語

ふろ‐しき【風呂敷】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 入浴の際、衣類を脱いで包んだ布。風呂からあがったあと、その布の上で衣服をつけた。また、風呂褌など入浴用具を携行するのに用いた布。
    1. [初出の実例]「座をとって風呂敷(フロシキ)のうへになをれば」(出典:浮世草子・好色一代女(1686)五)
  3. 物を包む四角形の布。一般には元祿(一六八八‐一七〇四)のころから用いられた。古名、平包(ひらづつみ)
    1. [初出の実例]「一 こくら木綿風呂敷 壱」(出典:駿府御分物御道具帳‐下・元和二年(1616)一一月二三日)
  4. 常に風呂敷包みを背負っている商人をいう。呉服屋などの類。
    1. [初出の実例]「牙婆(すあい)の袱(フロシキ)連中は両茶や常得意」(出典:談義本・養漢裸百貫(1796)五)
  5. じゃんけんで、五本の指を全部開いた形。かみ。ぱあ。
    1. [初出の実例]「ちいりこ(東京のジャンケン)できめ、〈略〉手を振り鋏や石や風呂敷(東京の児童のいふ紙)の形を出して決める」(出典:明治大正見聞史(1926)〈生方敏郎〉憲法発布と日清戦争)

風呂敷の語誌

( 1 )は古くは「ひらづつみ(平包)」と呼ばれ、平安時代から絵画にも多く描かれている。「風呂敷」の名称は近世以降見られるようになるが、その契機は室町時代の風呂の流行により、の意で用いたところから生まれた。
( 2 )「平包」「風呂敷」の語は宝暦一七五一‐六四)頃まで併用されていたが、次第に「平包」の語はほとんど用いられなくなった。


ふる‐しき【風呂敷】

  1. 〘 名詞 〙 「ふろしき(風呂敷)」の変化した語。
    1. [初出の実例]「ふるしきを敷て田うへを肴にし」(出典:雑俳・川柳評万句合‐宝暦一〇(1760)満二)

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改訂新版 世界大百科事典 「風呂敷」の意味・わかりやすい解説

風呂敷 (ふろしき)

物を包むための布。奈良時代の正倉院御物にも見られ,平安時代には〈ころもつつみ〉〈平包み〉と呼ばれていた。《扇面古写経》の下絵には平包みを頭にのせた絵がある。〈風呂敷〉という言葉が文献に現れるのは,徳川家康の形見分けの記録《駿府御分物御道具帳》であり,江戸時代の初めには一般化した。名の由来としては,(1)風呂(蒸し風呂)の床板に敷いた,(2)湯上がりの足ふきとして使った,(3)自分の衣類を区別するために包んだためという。室町幕府で大名たちが衣類を包んだり湯上がりに敷いた史実から(3)の説が一般的で,室町~江戸初期にはゆかたをつけて入浴したため,脱衣を包んだりぬれたゆかたを包む必要があり,銭湯の発達とともに一般庶民にまで普及していった。江戸中期ころにはゆかたの省略や脱衣籠や棚の出現により,本来のふろしきとしての使用は少なくなった。当時は紺無地や縞柄の木綿布を縫い合わせたものが多かったが,輸入ものの広幅の更紗(さらさ)や専用の型染をしたもの,中央に家紋を染めぬいたものもあった。ふろしきの代表柄である唐草模様は,江戸時代の更紗の流行以後,寿柄として伝えられた。商家では3幅から7幅の麻の大ぶろしきが使われ,それには補強も兼ねた刺子をしたり,定紋や屋号をつけて宣伝に利用することも行われた。また火事の多かった江戸では,布団の下に大ぶろしきを敷き,半鐘が鳴ると布団をくるんで飛び出したという。

 昭和の初めまでその融通性からちょうほうがられていたふろしきも,現在では贈答品,景品,引出物に用いられる程度である。とはいえ,関東地方だけで年間4000万枚近くが販売されているという。その素材には,絹,綿,毛,化学繊維のものがあり,大きさは70cm前後のものが一般的である。現在全体の約6割を占めるのが化学繊維製で,結婚式の引出物を包むのに用いられている。東北地方の女性がフロシキボッチと呼ばれる被物に利用する例もある。都会でも明治・大正のころには紫ちりめんの御高祖(おこそ)頭巾が流行した。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「風呂敷」の意味・わかりやすい解説

風呂敷
ふろしき

物品を収納したり、保存、携行するために用いられる、布製で方形のもの。わが国ではこれを平包(ひらつつみ)とよんで、古くから用いられた。絵巻物にも多くみられ、上刺(うわさし)がしてあって、破れないようにくふうされている。しかし平包は長期の保存や大きな物を収納するのには不便であるところから、その場合は唐櫃(からびつ)、長持(ながもち)が用いられていた。平包が風呂敷と名称を変えるようになったのは、室町時代末期、町風呂といわれる銭湯ができたことに起因する。

 当時の入浴は、現代のように全裸では入らず、男も女も風呂褌(ふんどし)をして入ったが、脱衣場で平包の上で身じまいをするために、この方形の布を風呂敷とよぶようになった。徳川家康の形見分けの品を書いた駿府(すんぷ)徳川家形見分帳のなかに風呂敷があり、これが今日最古の資料ではなかろうか。元禄(げんろく)時代(1688~1704)になると、風呂敷のことを平包と称して両様に使っている。また品物を風呂敷で包んで、頭上にのせて行商して歩く「おちゃない」という職業さえあった。

 風呂敷は、江戸時代も年代が下るにつれて、大小さまざまの種類ができ、四尺五寸(約136センチメートル)物は大風呂敷とよんだ。越後(えちご)屋、白木屋などの大店(おおだな)では、丁稚(でっち)、小僧たちの寝具は、みな大風呂敷に包んで始末をし、また貸本屋、眼鏡直し、しょい呉服などは大風呂敷で行商して歩いた。小さな風呂敷は、各家庭での買い物に利用された。風呂敷の材料は木綿が主であるが、なかには縮緬(ちりめん)、朱子(しゅす)類なども用いられた。明治以降、鞄(かばん)類や手提げ袋、信玄袋などが普及するにつれて風呂敷への需要は減退しているが、携行に便利なところから、その利用度はまだ高い。

[遠藤 武]

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百科事典マイペディア 「風呂敷」の意味・わかりやすい解説

風呂敷【ふろしき】

古くは〈ひらづつみ〉,〈ころもつつみ〉と称したが,江戸時代,銭湯での入浴の際,物を包んだり身じまいのため敷いたりしたところから〈ふろしき〉となった。大きさは2幅(約75cm)から7幅(約250cm)の蒲団(ふとん)風呂敷まである。絹の小幅物は四隅の一端に模様をおき,綿の大型のものは唐草模様などを大きく染め抜いたものが多い。

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デジタル大辞泉プラス 「風呂敷」の解説

風呂敷

古典落語の演目のひとつ。「風呂敷の間男」「褄重ね」とも。

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世界大百科事典(旧版)内の風呂敷の言及

【風呂】より


【日本】
 入浴方法には,密閉した部屋にこもらせた蒸気で蒸す〈蒸気浴〉と,湯槽(ゆぶね)にみたした温湯に入る〈温湯浴〉がある。現在日本では風呂といえば温湯浴が一般的であり,その湯槽および湯そのもの,または洗い場なども含めた部屋(浴室)ないし建物のことを風呂と呼んでいる。しかし風呂をこのような意味で用いるようになるのは,温湯浴が入浴の主流になる江戸時代後期以後の比較的新しいことであり,古代・中世から近世の前半ころまでは,風呂とは蒸気浴(蒸し風呂)のことであった。…

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