日本大百科全書(ニッポニカ) 「藤原豪信」の意味・わかりやすい解説
藤原豪信
ふじわらのごうしん
生没年未詳。鎌倉末期から南北朝にかけて活躍した画家。藤原為信(ためのぶ)の孫で為理(ためすけ)の子(実父は為信)。名は未詳。天台僧となり、法印に叙せられる。豪信は法名。藤原隆信(たかのぶ)6代の孫として、その家芸である似絵(にせえ)の伝統をよく受け継いだ最後の画家。1320年(元応2)には『伏見(ふしみ)天皇影』の模写を行う。以後1348年(正平3・貞和4)『風雅(ふうが)和歌集』竟宴(きょうえん)の似絵を描くまで、その作画活動が記されている。現存する遺品のなかでも京都・長福寺蔵の『花園(はなぞの)天皇像』(国宝)は、似絵の技法を生かして、像主の個性を生き生きと描いている。画面には花園天皇自らが賛を施しており、1338年(延元3・暦応1)に豪信が描いたものであることが知られる。また『天皇摂関大臣影』(御物)にも豪信の描いた部分が含まれていると考えられる。鎌倉時代の似絵の伝統は、豪信をもってその掉尾(とうび)を飾ったといえよう。
[加藤悦子]