内科学 第10版 の解説
血小板増加症の原因と分類(血小板/凝固系の疾患総論)
の原因と分類
定義・概念
血小板数の上限は施設により異なるが一般的には40万/μL前後である.血小板増加症の一般的な臨床的目安は45万/μL以上と考えられる.腫瘍性(クローン性血小板増加症)と反応性(二次性血小板増加症(secondary thrombocytosis))がある.腫瘍性の場合,多くは骨髄増殖性疾患(骨髄増殖性腫瘍)によるものであり,反応性のものは種々の疾患や状態が原因となって起こる.一般に前者,特に本態性血小板血症では100万/μL以上となることが多く,後者では100万/μL以下がほとんどである.血小板増加により特に末梢での血液循環に障害が起こり,血栓傾向をきたすことがある.一方,血小板増加症では血小板機能異常により逆に出血傾向がみられる場合がある.これらは本態性血小板血症の場合は異常クローンの増加に由来すると考えられるが,一方で血漿von Willebrand因子(VWF)の減少やVWF高マルチマー欠損など,血小板増加が原因と考えられる異常も存在する.
病態生理
腫瘍性は骨髄増殖性疾患(骨髄増殖性腫瘍)によるものであり,本態性血小板血症,真性赤血球増加症,特発性骨髄線維症,慢性骨髄性白血病が含まれる.それぞれの疾患の病態は別項を参照されたい.本態性血小板血症の診断においては,ほかの骨髄増殖性疾患や反応性血小板増加症との鑑別が重要である.
反応性血小板増加症の発症機序は必ずしも明確でないものも多い.炎症性ではIL-6などのサイトカイン放出の関与が想定されている.鉄欠乏性貧血では通常軽度(40万~50万/μL)の増加にとどまることが多い.摘脾後では一過性に100万/μL
以上も観察されるが数カ月で正常化する.
臨床症状
原疾患により異なる.末梢循環障害によって倦怠感,めまい,頭痛,視力障害なども認めることがあるが無症状が多い.血小板数が100万/μL
以上では人によっては手の指先のしびれ(ピリピリ,またはじんじんする感じ)が現れることがある.上述のように,合併する血小板機能異常による出血傾向がみられることもある.
鑑別診断
表14-11-2に基づいて鑑別診断を行う.腫瘍性,特に本態性血小板血症と二次性血小板増加症の鑑別は臨床的に重要である.なぜなら両者では治療方針がまったく異なるからである.末梢血(ヘモグロビン値,白血球や赤血球の異常),骨髄所見(骨髄像,染色体,生検),血清フェリチン,感染や炎症の有無,悪性腫瘍の合併,脾摘の有無,などを調べる.
本態性血小板血症の診断は別項に譲るが,除外診断のために循環赤血球量,あるいはHb(ヘモグロビン)値,骨髄鉄染色,血清フェリチン,MCVなど真性多血症との鑑別に重要であり,フィラデルフィア染色体,BCR-ABL融合遺伝子などは慢性骨髄性白血病との鑑別に重要,さらに骨髄生検で骨髄線維化の有無は骨髄線維症との鑑別に重要である.また骨髄異形成症候群で血小板増加をきたす病態が知られており,染色体異常(5q-, t(3;3),inv(3)など)の検索が肝要である.JAK2V617F遺伝子変異かほかのクローナル異常の有無の検索も重要である.
一方,二次性血小板増加症との鑑別においては表14-11-2に示された病態の有無を細かく検索する必要がある.
治療
原因により異なる.各論を参照されたい.[村田 満]
■文献
Swerdlow SH, Campo E, et al: WHO Classification of tumours of haematopoietic and lymphoid tissues. IARC Press, Lyon, 2008.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報