家庭医学館 の解説
けつえきちゅうのしぼうとりぽたんぱく【血液中の脂肪とリポたんぱく】
血液の中には、コレステロール、中性脂肪(ちゅうせいしぼう)(トリグリセリドまたはトリグリセライド)、リン脂質(ししつ)、遊離脂肪酸(ゆうりしぼうさん)と呼ばれる4種類の脂肪(脂質(ししつ))が存在しています。
これらの脂肪のうち、コレステロール、中性脂肪、リン脂質は、おもに肝臓で合成されています。そして、コレステロールとリン脂質は、細胞膜(さいぼうまく)などのからだを構成する材料として利用され、中性脂肪と遊離脂肪酸は、エネルギー源として利用されています。
脂肪は、水には溶けませんが、血液中では、アポたんぱくというたんぱく質と結びつき、溶けた状態になって存在しています。アポたんぱくと脂肪とが結合しているこの成分をリポたんぱくといい、球状の構造をしています。
リポたんぱくは、脂肪が多く含まれるほど比重が軽くなります。その比重のちがいから、カイロミクロン、超低比重(ちょうていひじゅう)リポたんぱく、中間比重(ちゅうかんひじゅう)リポたんぱく(IDL)、低比重(ていひじゅう)リポたんぱく、高比重(こうひじゅう)リポたんぱくの5つの種類に分けられています。ただし、中間比重リポたんぱくは、正常者ではみられません。そのうち、動脈硬化と関係が深いのは、低比重リポたんぱくと高比重リポたんぱくに含まれるコレステロールですが(「高脂血症(高リポたんぱく血症)」)、中間比重リポたんぱくが多くても動脈硬化が進行します。
◎カイロミクロン(カイロマイクロン)
カイロミクロンは、アポEというアポたんぱくと脂肪とが結合しているリポたんぱくで、その85%は中性脂肪です。
小腸(しょうちょう)で合成され、肝臓を通らずに直接、血液中に入ります。血液といっしょに全身をめぐるうち、毛細血管にあるリポたんぱくリパーゼによって分解され、その多くはエネルギー源として利用されます。
残りはカイロミクロン・レムナント(粒子(りゅうし))となり、肝臓へ運ばれて処理されます。このレムナントもIDLと同様、動脈硬化の原因となります。
◎超低比重リポたんぱく(VLDL)
超低比重リポたんぱくは、アポCⅠ、アポCⅡ、アポCⅢというアポたんぱくと脂肪とが結合しているリポたんぱくで、肝臓で合成されます。その50%は中性脂肪で、血液といっしょに全身をめぐるうち、中性脂肪が分解されて重さを増し、中間比重リポたんぱくを経て低比重リポたんぱくとなります。
◎低比重リポたんぱく(LDL)
低比重リポたんぱくは、アポBというアポたんぱくと脂肪とが結合しているリポたんぱくで、その45%はコレステロールです。
肝臓でつくられ、コレステロール、リン脂質を運搬していき、細胞に渡すはたらきをしています。この低比重リポたんぱくの血液中の量が多いと、血管の内側にコレステロールがしみ込みやすくなってしまいます。
◎高比重リポたんぱく(HDL)
高比重リポたんぱくは、アポAⅠ、アポAⅡというアポたんぱくと脂肪とが結合しているリポたんぱくです。肝臓でつくられ、血液といっしょに全身をめぐるうちに、細胞内の余分なリポたんぱくやコレステロールをぬき取り、肝臓まで運んでいって処理させるはたらきをしています。その際、他のリポたんぱくとの間で、脂肪やたんぱくの受け渡し(転送)も行なっています。