家畜の遺伝的改良をはかる場合に基礎となるのは,ある個体から父母,祖父母と祖先へさかのぼった血縁関係を明確にすることである。そのために行われるのが血統登録であり,人間でいえば戸籍に相当する。現在では改良の進んだ品種についてはそれぞれの品種ごとに,政府または公共機関(登録協会)の手で登録事業が営まれ客観性と正確性を期している。日本でも乳牛,和牛,軽種馬,ヒツジ,ヤギ,ブタなどで実施されている。家畜の血統登録は古くはアラビア人がアラブ種のウマの改良において実施したといわれているが,組織的に行われて現在まで続いているのはイギリスのサラブレッド種について1791年に開始されたのが最初である。血統登録されたものを集め記載したものが血統登録簿で,登録個体には血統証明書(血統書)が交付される。登録には閉鎖式と開放式がある。閉鎖式登録は品種として成立の古い確立された品種について行われるもので,すでに登録された血統の明らかなものどうしの交配によって生まれた個体のみを登録する方式である。純粋性を保つ役割を果たし,イヌやネコなど愛玩動物の品種の登録はほとんどこれである。イヌについては欧米では各国に一つの団体が血統書を発行しているが,日本ではいろいろの団体が独自の血統書を発行している。ネコも日本ではいくつかの団体が血統書を発行している。開放式登録は品種成立の歴史の浅いものやその途上にあるものについて行われ,登録個体以外でも,育種に役だつ個体は選び出して基礎登記し,生まれた子の中で標準に合格したものを予備登録する。さらにその子の中で合格したものは本登録するというように,累代的に段階を設けて登録に組み入れる方式である。また登録個体間に生まれたものすべてを無条件に登録するのではなく,一定の基準を超えた個体だけを選んで登録する選択登録という方式もあり,この方が育種には積極的な意味をもつ制度といえる。血統登録に際しては個体の識別が必要であり,また親子関係の正確な認識が重要である。従来個体の識別には毛色・斑紋・旋毛の位置・鼻紋などの外貌上の特徴や,耳標・入墨・耳刻・焼印などの手段が用いられたが,人工授精技術の普及に伴い,父畜の認定を誤る危険が増えてきたので,最近では血液型の遺伝を利用し個体の識別,親子関係の確認が行われている。
執筆者:正田 陽一
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