改訂新版 世界大百科事典 「計量地理学」の意味・わかりやすい解説
計量地理学 (けいりょうちりがく)
quantitative geography
計量的手法を用いて,事象の分析,解釈をすすめ,また,モデル化を通じて法則化を行う地理学の一分野。1930年代から松井勇らによって,推計学,確率論の導入が試みられたが,60年ころから,北欧,ついで北米を中心にして〈計量革命〉を軸とする〈新しい地理学〉が唱えられ,方法論として定着した。計量地理学は,単に分析手法として計量的方法を用いるのみでなく,記述に偏しがちであった従来の地理学に対して,法則定立を目的とするという立場から,バンジW.Bungeらは〈理論地理学〉と称した。また数理地理学mathematical geographyと呼ばれることもある。計量地理学で使われる方法としては,統計分析,数学モデル,数値シミュレーション,非数値シミュレーションなどがある。統計分析においては,多変量解析,とくに因子分析,主成分分析,数量化理論が多く用いられる。因子分析を地域の分析に用いたものを因子生態学という。特殊な統計分析として,傾向面分析や点分布分析などの空間分析があり,種々多様の数学モデル,数値シミュレーションも用いられている。これらの分析手法のほか,計量地理学の一分野として,リモートセンシング等のデータ取得に関する研究や,地図を自動作成するコンピューターマッピング等の表現に関連する研究もある。
執筆者:久保 幸夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報