証人審問権(読み)しょうにんしんもんけん

改訂新版 世界大百科事典 「証人審問権」の意味・わかりやすい解説

証人審問権 (しょうにんしんもんけん)

憲法刑事被告人に保障している権利の一つ。すなわち,刑事被告人は,すべての証人に対して審問する機会を十分に与えられ,また公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する(憲法37条2項)。人的証拠においては,人の供述内容が立証の資料となる。そこには,物的証拠とは異なり,さまざまな主観的要因が加わるため,その証明力を判断するには少なからぬ困難が伴う。したがって,例えば犯行の目撃者などは,これを証人として直接に公判廷に呼び出し,当事者の反対尋問にさらす必要がある。そのようにして,はじめて供述に含まれる疑問点や不明点が吟味・検討され,その供述の証拠としての価値が高まり,また被告人の利益が保護されることとなるのである。当人供述調書ですませ,あるいはその者から犯行のもようなどを聞かされた他の者を尋問するというやり方は,原則として許されない。つまり,伝聞証拠は原則として証拠能力をもたないのである。第2次大戦後,憲法はこれを刑事被告人の権利として位置づけ,その37条2項によって保障したのである。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「証人審問権」の意味・わかりやすい解説

証人審問権
しょうにんしんもんけん

すべての証人に対して審問する機会を十分に与えられる刑事被告人の権利をいう。憲法第37条2項前段は証人審問権を国民の権利として保障している。これについて判例は、憲法第37条2項の規定は、職権または請求により喚問した証人につき反対尋問の機会を充分に与えなければならないというのであって、尋問の際に反対尋問の機会を与えない証人その他の供述は絶対に証拠としてはならないという意味ではない(昭和24年5月18日最高裁判所大法廷判決)とし、また、被告人が退廷を命じられ、退廷中に証人尋問が行われても、弁護人が尋問に立ち会い、かつ被告人に証言要旨を告げ証人尋問を促した場合には、憲法第37条2項に違反しない(昭和25年3月15日最高裁判所大法廷判決)としている。

[内田一郎]

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