象皮病(読み)ゾウヒビョウ

  • ぞうひびょう ザウヒビャウ
  • ぞうひびょう〔ザウヒビヤウ〕
  • 象皮病 elephantiasis

百科事典マイペディアの解説

バンクロフト糸状虫などのフィラリアによる感染症。媒介。下肢,陰茎陰嚢などの皮膚が,発赤・腫脹(しゅちょう)し,発熱,悪寒(おかん)などを呈し,これを繰り返すうちに皮膚が肥厚・変形してゾウの皮に似る。母虫がリンパ系に寄生し,リンパ鬱滞(うったい)をきたすのが原因。乳糜(にゅうび)尿陰嚢水瘤を伴うこともある。おもに熱帯地に多く,日本では九州の一部で風土病としてみられた。治療にはクエン酸ジエチルカルバマジンを投与象皮が起こった場合は副腎皮質ホルモン剤投与。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典 第2版の解説

皮膚が全体に肥厚し,浮腫性で,表面がざらざらになり,象の皮膚を思わせる外観を呈するものをいう。ふつうフィラリア症に伴う皮膚変化を指すが,手術や外傷後のリンパの鬱滞(うつたい)に基づく類似の変化にも用いられることがある。フィラリア症は吸血昆虫を中間宿主とする糸状虫感染症で,日本では九州地方の風土病としてみられたが,近年は著しく減少した。フィラリアの成虫はおもに腹部リンパ系に寄生し,幼虫(ミクロフィラリア)が夜間循環血液中に出現し,発熱を起こす。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

リンパ液のうっ滞のために皮膚および皮下組織が厚くなってゾウの皮膚のような状態を呈する慢性の皮膚病。おもに下肢に好発し、ついで陰嚢(いんのう)、大陰唇に多い。糸状虫症(フィラリア症)から移行するものと、その他の疾患に続発するものとに分けられる。

 カによって媒介されるバンクロフト糸状虫が原因となるものは、熱帯および亜熱帯地方に多く、糸状虫性象皮病あるいは熱帯性象皮病とよばれる。日本ではかつて沖縄、九州南部に地方病的にみられ、俗に「くさふるい」とよばれていたが、現在は根絶されている。海外旅行中に感染することがある。糸状虫症は、まず下肢や陰嚢に発赤腫脹(しゅちょう)(赤く腫(は)れる)として現れ、同時に発熱、頭痛、腰痛、関節痛などを伴う。この症状は数日で軽快するが、反復して発症するうちに象皮病に移行する。糸状虫によらないで、慢性潰瘍(かいよう)、慢性炎症性疾患、再発性丹毒、腫瘍(しゅよう)およびリンパ節摘出などに続発しておこるものは、続発性象皮病とよばれる。この場合も、糸状虫症と同様にリンパ液のうっ滞による。

 治療としては、原因疾患に対する処置がたいせつであり、皮膚の肥厚部には対症療法的に形成手術が行われることもある。

[伊崎正勝・伊崎誠一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 リンパ循行障害のため、皮膚および皮下組織が象の皮のように堅く肥厚する慢性の病気。多くは、リンパ質内に寄生虫フィラリアが寄生して起こる。アフリカ、東南アジア、中央アメリカなど熱帯地方に多い。日本ではかつて九州に多く発生。〔最暗黒之東京(1893)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

世界大百科事典内の象皮病の言及

【水腫】より

…また筋肉の運動はリンパ液の灌流を促進するので,半身不随などでは麻痺側に水腫がおこりやすい。フィラリア糸状虫がリンパ管内に多数寄生すると,下肢・外陰部に高度の水腫がおこり,象皮病となる。 水腫がおこると,組織は膨張し,しわはのび緊張し,蒼白,貧血状となり,温度も下がる。…

【フィラリア】より

… 人体寄生種のおもなものには,バンクロフトシジョウチュウ,マレーシジョウチュウBrugia malayiオンコセルカ,ロアシジョウチュウLoa loaなどがある。このうち前2者はリンパ系に寄生し,象皮病の原因となる。オンコセルカはアフリカ,中南米など赤道直下の熱帯地方に分布し,皮下に寄生して腫瘤を形成し,またしばしば目にも侵入して失明の原因となることもある。…

※「象皮病」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

今日のキーワード

ノーブレスオブリージュ

《「ノブレスオブリージュ」とも》身分の高い者はそれに応じて果たさねばならぬ社会的責任と義務があるという、欧米社会における基本的な道徳観。もとはフランスのことわざで「貴族たるもの、身分にふさわしい振る舞...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android