陰囊水瘤(読み)いんのうすいりゅう

改訂新版 世界大百科事典 「陰囊水瘤」の意味・わかりやすい解説

陰囊水瘤 (いんのうすいりゅう)
hydrocele testis

陰囊水腫あるいは睾丸水瘤ともいう。睾丸固有鞘膜と呼ばれる二重の膜で包まれている。正常でもこの2層の膜の間には少量の液が存在しているが,ここに異常に大量の液が貯留した状態をいう。貯留液は淡黄色透明である。幼児と老人に多く,その発生原因は固有鞘膜内面における液の分泌の異常亢進または液の再吸収障害によると考えられる。先天性のものと後天性のものに大別され,前者は幼児に多く後者は老人に多い。後天性のものの原因には,睾丸の外傷,睾丸・副睾丸炎睾丸腫瘍などがあげられる。症状は陰囊の腫大であるが,自発痛や圧痛はなく,睾丸腫瘍のように硬くはない。暗い所で懐中電灯を直接あて反対側からすかして見ると,うす明るく光が腫瘤を透過していることがわかる。これは内容がほぼ透明な液体である証拠で,睾丸腫瘍のように実質性の場合には光を通さない。幼児では,注射器で穿刺(せんし)し,液を排除すると,自然に治癒することもある。大きいものや増大するものでは,あまり頻繁に穿刺するより手術を行ったほうがよい。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「陰囊水瘤」の意味・わかりやすい解説

陰嚢水瘤
いんのうすいりゅう

睾丸(こうがん)水瘤ともいう。睾丸は8層の膜に包まれているが、そのうちの睾丸固有鞘膜(しょうまく)とよばれる内外2枚の膜の間に多量の漿液(しょうえき)がたまる疾患である。局所の外傷、副睾丸および睾丸の腫瘍(しゅよう)や急性炎症のときにおこることもあるが、40歳過ぎに発病してくるものは原因不明で、慢性に経過する場合が多い。睾丸からやや離れた精索内の鞘膜内に液体が貯留した場合は、精索水瘤という。新生児にみられるものは、睾丸が陰嚢内に下降するときに同伴してくる腹膜鞘(さや)状突起が開いたまま腹腔(ふくくう)内と交通している場合に水瘤ができるもので、早晩、鞘状突起が閉じれば自然に治ってしまう。一般に痛みはなく、陰嚢に柔らかい嚢状の腫瘤を触れる。鶏卵大から小児頭大以上の大きさになることもある。暗所で光線を当てると透光性があり、針で穿刺(せんし)すると透明で黄色の液体が出る。液を十分に除去したあと、睾丸および副睾丸を入念に触診し、腫瘍の有無を確かめておくことがたいせつである。急性の場合は、原因疾患が治れば水瘤は消失する。原因不明で慢性に経過するものは、針穿刺によって繰り返し貯留した液体を除去する。手術によって鞘膜を切除するか、裏返して縫合してしまうと完全に治癒する。

[松下一男]

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百科事典マイペディア 「陰囊水瘤」の意味・わかりやすい解説

陰嚢水瘤【いんのうすいりゅう】

陰嚢水腫とも。陰嚢の中の睾(こう)丸(精巣)と被膜の間に液体のたまる病気。先天性のものもあり,後天的に,外傷,睾丸炎,副睾丸炎などによるものもある。先天性のものは,大部分は成長と共に吸収されるが,1歳半をすぎても治癒しない場合は,穿刺(せんし)排液,手術によって治療。後天的なもののうち,他の病気による二次的なものは,原因疾患の治療が主となる。
→関連項目象皮病

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