日本大百科全書(ニッポニカ) 「パッチテスト」の意味・わかりやすい解説
パッチテスト
ぱっちてすと
patch test
皮膚における遅延型アレルギー反応を惹起(じゃっき)する抗原を検索する目的で、原因と思われる物質(被疑物質)を皮膚に接触させ皮膚表面の変化をみる検査法。「皮膚貼付試験」ともいい、被疑物質を直接皮膚に貼付(patch)することからその名がついた。
[安部正敏 2021年8月20日]
目的・方法
皮膚における遅延型アレルギー反応を検出するために行う検査である。被疑物質を絆創膏(ばんそうこう)のような検査用具に塗布し、背中など貼りやすい部分に貼付する。そのまま48時間連続で貼り続ける。この間入浴は禁止となる。48時間後にはがし、30分程度経た後に、被疑物質を塗布した部分の皮膚の色調を中心とした変化を観察する。紅斑(こうはん)や水疱(すいほう)の有無により判定を行う。判定は貼付後48時間、72時間、必要に応じて7日後に行う。被疑物質の刺激性が懸念される場合には適宜ワセリンなどで希釈して行う。また、非特異的な刺激(被疑物質以外の何らかの刺激)による偽陽性反応を除外するため、かならずワセリンなどの陰性コントロール(被疑物質を含まないサンプル)を設定することが重要である。
他方、紫外線が関与する光接触皮膚炎を検査する場合には、パッチテストを2系列同様に作成し、片方には24時間後に紫外線を当てることで、紫外線を当てたほうのみに反応が出る、もしくは反応が強くなることで陽性と判断する。最近では、金属アレルギーや主要アレルゲンに対するパッチテスト資材があり、医療機関でより簡便に検査できるようになっている。
結果として、陽性反応が得られた物質が、遅延型アレルギー反応を惹起する抗原であることが判明する。
[安部正敏 2021年8月20日]
注意点
汗をかきやすい夏季などにパッチテストを行うと、貼付する絆創膏などによる刺激で接触皮膚炎(かぶれ)をおこすことがある。
また、検査の注意事項として、刺激性の強い物質は、遅延型アレルギー反応ではなくそれ自体が皮膚に接触皮膚炎をおこすため、検査するべきではない。また、検査目的で行うパッチテストによって感作(かんさ)が成立する(新たにアレルギー反応が出てしまう)場合があり、注意が必要である。
[安部正敏 2021年8月20日]
オープンパッチテスト
いわゆる「毛染め(染髪剤)」は、接触皮膚炎の原因となることがあることから、これを回避する目的で、市販の染髪剤の説明書には、使用前に使用者が自ら上腕などに製品の一部を塗布し、皮膚の反応を見るように書かれている。本法もパッチテストと称される場合があるが、これは当該部位を絆創膏などで覆っているわけではなく、「オープンパッチテスト」とよばれる。
[安部正敏 2021年8月20日]
『内藤亜由美・安部正敏編『スキントラブルケア パーフェクトガイド』改訂第2版(2019・学研メディカル秀潤社)』